(写真はイメージです/PIXTA)

さまざまな理由で出社を拒否する従業員への対応に頭を悩ませている経営者の方もいるのではないでしょうか。本記事では、弁護士法人 咲くやこの花法律事務所の代表弁護士の西川暢春氏が、主な出社拒否の理由4パターンと、企業側に求められる配慮、それぞれの理由に沿った対応方法について、事例を交えて解説します。

うつ病等の体調不良を理由とする出社拒否

体調不良を理由に仕事を休みたい、という申し出が従業員から出た場合、会社は原則として申し出に応じる義務があります。

 

そのため、引き継ぎの必要や多忙を理由に休ませることを遅らせることは、安全配慮義務違反に該当するケースがありますので、注意が必要です(参照:福岡高等裁判所判決平成28年10月14日)。

 

上記のような理由から、体調不良による休職を求められた場合は、基本的にはすぐに休ませるということを前提に対応するべきですが、その際には、診断書の提出を求めることが必要です。

 

診断書で、従業員に一定期間の自宅療養が必要とされている、ということを確認したうえで従業員に休職を命じる、というのが企業側の正しい対応になります。

 

一方で、説得しても不合理な理由で出社せずに、診断書の提出にも応じない、という場合は、当該の従業員を解雇することも含めて検討することが可能になります。

病気休職からの復職をめぐるトラブル

病気休職から復職する際に、勤務時間や職種といった、復職の条件をめぐってなかなか会社と折り合いがつかないために出社拒否に至ってしまう、というケースがあります。

 

従業員が病気から復職する場面では、判例上、復職にあたって、会社が本人の体調に応じて一定の配慮をしているか、会社としての配慮義務を果たしているか、という点を確認する必要があります。元通りに働けなくても、復職を認める必要がありますし、それに伴う配慮をしなければいけません。

 

病気休職から復職する際の配慮の例

 

1. 業務を軽減すれば勤務が可能な場合は業務を軽減する

 

業務を軽減すれば勤務が可能、という場合は業務を軽減するために、就業時間を短くする、残業を無くす、といった対応を取らなければいけません。

 

2. 職種限定契約でない場合で、現実的な配置可能性のある他の業務で就業を本人が申し出ている場合はそれに応じる

 

具体的な例をあげると、職種限定契約ではなく、さまざまな職種に配置転換される可能性のある営業職の従業員がいたとします。その従業員が休職からの復帰時に「営業職はきついけれども、内勤職だったら勤務ができるから、しばらく内勤職の仕事をさせてほしい」という希望を出した場合は、会社としてはそれに応じる必要がある、ということです。

 

このような配慮は、判例上義務付けられています。会社として、きちんと配慮をおこなっているかどうかを、しっかり確認してください。

 

必要な配慮をしても出社を拒否する場合は、出社拒否が認められないことを従業員に説明し、説得してください。説得に応じず、出社拒否を続ける場合は、解雇も検討することが可能です。

 

病気休職からの復帰をめぐるトラブルの結果、解雇が認められた事例

(東京地方裁判所判決 平成28年1月26日)

三菱重工の愛知県内事業所の従業員が、適応障害で休職したのちに、復職にあたって同居の家族による支援が不可欠だと主張し、実家のある埼玉県から通勤可能な場所での復職を会社に求めました。しかし、この希望に会社が応じなかったために従業員は出社を拒否。その後、従業員は解雇されました。

 

これを従業員側が提訴したところ、裁判所は「原告(従業員)の食事、洗濯、金銭管理等の生活全般の支援をどうするかは本来的に家族内部で検討・解決すべき問題である」という判断を下しました。つまり、従業員側の主張は家族内部で解決すべき問題であり、出社拒否するのは不当なため、解雇は有効となりました。

 

このような事例もあるため、企業の配慮の義務というのは無制限ではありません。とことん配慮しなければいけない、というわけではなく、あくまで一定の配慮を義務づけられている、ということを押さえておきましょう。

 

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