(写真はイメージです/PIXTA)

経営者にとって、従業員の指導は非常に難しいものです。従業員のためを思って厳しく指導しても、「パワハラだ」といわれてしまうことがあるのではないでしょうか。本記事では、弁護士法人 咲くやこの花法律事務所の代表弁護士の西川暢春氏がパワハラの基本的な考え方と判断基準について、事例を交えて解説します。

「パワハラ」についてよくある相談

パワハラに関するQ&A

 

Q 勤務態度が悪い従業員に対して指導したところ「パワハラだ」といって労働基準監督署へ告発されました。あくまで指導のつもりだったのですがパワハラにあたるのでしょうか

 

A 従業員への指導が適正な範囲を超えていたり、発言に容姿や病気などの業務に無関係な人格攻撃が含まれていたりするとパワハラにあたります。

 

■パワハラの判断基準は?

厚生労働省のパワハラに関する判断基準は非常に複雑でわかりにくいものになっています。普段、従業員を指導する際は、次の三つの条件に気をつけていれば、基本的にはパワハラにはあたらなくなるでしょう。

 

1.指導を目的とした発言であること

 

一つ目の条件は、指導を目的とした発言であることです。たとえば、「辞めてしまえ」などの退職強要発言や「新人でもできる」「新人以下だ」などの侮辱発言が、パワハラにあたります。

 

これらの発言を聞いても、従業員は自身の業務を改善することができません。したがって、指導を目的とした発言と認められず、パワハラと判断されることがあります。

 

2.発言・手段が過剰でないこと

 

二つ目の条件は、発言・手段が過剰でないことです。指導を目的としていれば、どんな発言・手段であってもパワハラにあたらないわけではありません。

 

必要な指導をしないまま結果のみに対する叱責を続ける、ほかの従業員の面前で怒鳴りながら叱責する、達成不可能なノルマを課すなど、指導であっても発言・手段が過剰であった場合にはパワハラと判断されることがあります。

 

3.言動に人格攻撃が含まれていないこと

 

容姿、国籍、信仰、病気などの、業務とは無関係のパーソナルな部分を否定・攻撃する発言が含まれている場合、パワハラと判断されることがあります。

「パワハラにあたる」と判断された事例

次に、実際に「パワハラにあたる」と判断された事例について見ていきたいとおもいます。

 

Case.1 侮辱発言

東京地方裁判所判決 令和元年11月7日 外国籍の女性従業員に対して国籍に関する差別的言動をした事例

 

外国籍の女性従業員に対して、「あなた何歳のときに日本に来たんだっけ? 日本語わかってる?」という発言をしたことがパワハラであると判断されました。

 

これは、国籍や外国籍に対する差別・侮辱発言ですので、三つ目の条件である言動に人格攻撃が含まれていることになり、パワハラだと判断されています。

 

Case.2 退職強要発言

東京地方裁判所判決 平成30年6月29日 従業員に対して退職を強要する発言をした事例

 

従業員に対して、社内試験を合格することができなかった場合は退職する旨の文書を作成させ、そのあと合格できなかった従業員に対して、会社に不要な人物であることを確認する内容の職場アンケートを実施することを示唆し、退職を迫ったことがパワハラであると判断されました。

 

これは、退職強要発言にあたりますので、一つ目の条件である指導を目的とした発言であることを満たさないので、パワハラだと判断されています。

 

Case.3 ほかの従業員の面前で大声での叱責

東京地方裁判所判決 令和元年11月7日 指導の際にフロア全体に聞こえるような大声で怒鳴りつけた事例

 

従業員の指導の際に、わざと目立つように自身のデスクの横に立たせたり、フロア全体に聞こえるような大声で怒鳴りつける指導をしたことがパワハラだと判断されました。

 

これは、二つ目の条件である発言・手段が過剰でないことを満たさないので、パワハラだと判断されています。

 

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