労災認定を受けたら会社はどうなる?想定される7つの影響【弁護士が事例で解説】 (写真はイメージです/PIXTA)

想像はしたくありませんが、もしも自社で事故が起きて労災認定されてしまったら…会社はどのような責任を負い、どのような影響を受けるのでしょうか。本記事では、企業の労務管理に詳しい弁護士法人 咲くやこの花法律事務所の代表弁護士の西川暢春氏が、会社が労災認定された場合に受ける影響について解説します。

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「労災認定の会社側の責任について」よくある相談

労災認定の会社側の責任に関するQ&A
Q うつ病で休職する従業員から、うつ病はパワハラによるものなので労災を申請したいといわれています。労災が認定されると会社にはどのような影響がありますか?

 

A 一般論として、労災認定されたときの会社への影響としては、主に以下の7つがあります。ご質問の事例については、そのうち、1、2の影響が考えられます。

 

1.被災社員から損害賠償を受ける可能性がある

2.被災社員の解雇が制限される

3.労災保険料が上がる可能性がある

4.入札を行っている会社は、入札で指名停止処分を受ける可能性がある

5.会社、あるいは会社の責任者が刑事罰を受けることがある

6.行政処分を受ける可能性がある(業種による)

7.報道などで、取引先などの信頼を失う可能性がある

 

1.被災社員からの損害賠償請求

会社は、従業員に対して安全配慮義務を負っています。安全配慮義務とは、従業員が職場で安全に働けるように配慮する、という会社の責任です。労災事故が会社の責任で起こった場合は、この安全配慮義務違反に抵触し、会社に対して損害賠償請求がされるケースがあります。

 

■会社が損害賠償請求を受けた事例

 

では、どのような労災事故が起こると、会社が損害賠償請求を受けることになるのでしょうか。以下では、その実例を紹介します。

 

Case1.うつ病が労災認定された場合

(名古屋地方裁判所 平成29年15月5日判決)

従業員が会社でのパワハラが原因でうつ病にかかり労災認定された事案では、裁判の結果、会社は被災社員に対して約200万円を支払うよう賠償命令が出されています。

 

Case2.心臓性突然死が労災認定された場合

(福岡地方裁判所 平成24年10月11日判決)

従業員の心臓性突然死が、会社に命じられた過重労働によるものだと労災が認定された事案。この事案では、会社に対して約8,500万円の賠償命令が出されています。

 

Case3.腰痛発症と後遺障害が労災認定された場合

(東京地方裁判所 平成23年11月10日判決)

従業員の腰痛発症と後遺障害が、運搬作業業務によるものだと労災認定された事案では、約2,000万円の賠償命令が出されています。

 

これらの事例のように、労災が認定された場合、被災社員から損害賠償請求がされる可能性があります。

 

■会社が損害賠償請求をされる理由とは?

 

では、なぜ会社は損害賠償をしなければならないのでしょうか。これは、安全配慮義務に反していたため、ということになります。

 

注意が必要なのは、慰謝料についてです。労災保険からも給付は出ますが、慰謝料は労災保険の補償の対象外のため、給付されません。そのため、会社に落ち度がある労災では、慰謝料は会社に請求されることになります。

 

また、従業員が休業する場合、休業補償給付が労災から給付されますが、給付額は給与の6割相当のため、残りの4割分を損害賠償請求された場合は、会社が負担する必要があります。

 

さらに、逸失利益も労災の補償の対象外になります。

 

逸失利益とは、労災事故が起きたことによって被災社員に後遺障害が残り、後遺障害によってこれまで通り働けなくなった場合、労災にあわなければ被災社員が本来得られたはずの収入のことをいいます。

 

この逸失利益も労災からの給付はないため、将来の減収分は会社への損害賠償請求の対象になることがあります。

 

■会社側からの交渉のポイント

 

以下のようなケースでは、損害賠償請求をされた際、提示された金額をそのまま支払うのではなく、会社側から金額を交渉できる可能性があります。

 

・過失相殺のケース

被災社員側にも労災が起こったことについて落ち度がある場合があります。この場合は「過失相殺」といって、被災社員側の過失割合分を割り引いて欲しい、という主張が可能になるため、検討の余地があるかと思います。

 

・会社側に注意義務違反や安全配慮義務違反がないケース

労災は、そもそも会社側に落ち度がなくても認定されます。つまり、労災が認定されたからといって、会社側に落ち度があった、ということではないのです。

 

そのため会社に落ち度がない、会社はきちんと安全配慮義務を果たしていた、という場合は労災が起きても会社は損害賠償責任を負いません。

 

・労災の上乗保険や使用者賠償責任保険に加入している場合

労災の上乗せ保険や、使用者賠償責任保険に入っている会社は、損害賠償を請求された際にはこれらの保険を使って損害賠償を補填することも可能です。

 

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弁護士法人 咲くやこの花法律事務所 代表弁護士

奈良県出身。平成10年東京大学文科一類入学、平成14年東京大学法学部卒業、平成15年司法試験合格、平成16年~最高裁判所司法修習生、平成17年大阪弁護士会登録。
[主な取扱い分野]労務・労働事件(企業側)、債権回収、消費者クレーム・取引トラブルの解決、IT関連トラブル、契約書のリーガルチェック、警備業法関連、顧問弁護士業務など。
著書に『問題社員トラブル円満解決の実践的手法~訴訟発展リスクを9割減らせる退職勧奨の進め方』がある。

弁護士法人咲くやこの花弁護士事務所:https://kigyobengo.com/
実績豊富な顧問弁護士サービス:https://kigyobengo.com/adviser
弁護士西川暢春の咲くや企業法務TV:https://www.youtube.com/channel/UCbwp9BNVEUan_fZwOErmBhQ

著者紹介

連載中小企業経営者が知っておきたい「実践的企業法務知識」

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