(※画像はイメージです/PIXTA)

ただでさえややこしい相続手続き。国をまたいだ相続が発生すると、被相続人の居住場所をはじめ、確認すべき事項が一気に増えます。本連載では、在日韓国人の方の相続手続きについて見ていきましょう。「どちらの国で何をすればいいの?」といった基礎情報から、実際のノウハウまで、日本経営ウィル税理士法人の顧問税理士・親泊伸明氏が解説していきます。

韓国での納税…「居住者」「非居住者」で期限が違う

■相続税申告書の作成 

 

韓国の相続税の申告期限は、原則として相続開始日が属する月の末日から6ヵ月以内です。被相続人が韓国非居住者の場合又は相続人全員が韓国非居住者の場合は、9ヵ月以内です。韓国の居住者か非居住者は相続税法の規定により判定され、被相続人の国籍は関係ありません。

 

なお相続税法では、居住者とは、韓国国内に住所を有し又は183日以上居所を有する個人をいい、非居住者は居住者でない個人と規定しています。住所とは、各自の生活の根拠となる場所をいい、国内で生計を一にする家族及び国内に所在する資産の有無など客観的な事実により判定されるもので、その判定は、韓国では原則的に韓国の住民登録法による住民登録地を基準にすると規定されています。

 

■相続財産の名義変更

 

遺産分割が決まれば相続財産を相続人名義に変更登記等をする必要があります。ただし、相続人が在日韓国人の場合、韓国内の住民登録番号がないので、不動産について一般的な相続登記とは異なる手続きが必要です。

 

たとえば、初めて不動産の名義者となる場合には、韓国内裁判所(物件管轄登記所)や出入国管理局に申請して不動産登記用登録番号を付与してもらわなければなりません。また、金融財産の場合、金融機関ごとに提出を要する書類が異なる場合がありますので注意が必要です。

 

■相続財産の売却・現金化

 

相続財産の名義変更が完了したのち、手持ちの現金で相続税の納税が困難な場合には、相続した財産を売却して資金を用意することになります。

 

韓国財産を売却した場合、その売却が相続開始時から半年以内だと、その売却価額が時価とされて、相続税の課税価額とされる場合があります。そのため、相続以後に値上がりしている資産を売却する場合には売却するタイミングなど注意が必要です。

 

また韓国税法では、相続により取得した資産の取得価額は被相続人の実際の取得価額ではなく、相続時の課税価額に変更されるため、相続税の課税価額より値上がりをしていなければ、譲渡所得は発生しないことになります。

 

しかし、日本居住者である在日韓国人の場合、日本では日本税法が適用されます。日本税法では、資産の取得価額を相続時の課税価額に変更するような規定はありませんので、韓国では譲渡所得の課税が生じなくても、日本では課税が生じる場合があるため注意が必要です。

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本稿は筆者が令和3年5月現在の情報に基づき、一般的な内容を簡潔に述べたものである為、その内容の正確性、完全性、最新性、信頼性、有用性、目的適合性を保証するものではございません。実際の判断等は個別事情により取り扱いが異なる場合がありますので、税理士、弁護士などの専門家にご相談の上ご判断下さい。

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