(※画像はイメージです/PIXTA)

ただでさえややこしい相続手続き。国をまたいだ相続が発生すると、被相続人の居住場所をはじめ、確認すべき事項が一気に増えます。本連載では、在日韓国人の方の相続手続きについて見ていきましょう。「どちらの国で何をすればいいの?」といった基礎情報から、実際のノウハウまで、日本経営ウィル税理士法人の顧問税理士・親泊伸明氏が解説していきます。

皆が日本にいても…「韓国での相続税申告」が必要?

■韓国で相続税申告が必要な場合とは

 

被相続人(亡くなられた方を被相続人といいます)が韓国の居住者である場合は、世界各国で所有するすべての財産に、被相続人が韓国の非居住者である場合は、韓国国内に所有する財産に対して、韓国で相続税が課されます。

 

韓国税法が規定する居住者とは、韓国国内に住所を有し又は183日以上居所を有する個人を指し、非居住者は居住者でない個人をいいます。居住者と非居住者の判定は、被相続人の国籍とは別です。

 

被相続人・相続人の全員が日本に住んでいても、相続開始日において韓国内に被相続人の財産が一定額以上(基礎控除以上)ある場合、韓国の非居住者として韓国の相続税の申告が必要になります。

 

基礎控除額は、被相続人が非居住者である場合(制限納税義務者の場合)、2億ウォン(約2000万円)です。

 

被相続人が居住者である場合(無制限納税義務者の場合)は、一括控除(人的控除)が5億ウォン、配偶者控除の最低額が5億ウォンですので、概算ですが配偶者がいる場合10億ウォン(約1億円)、配偶者がいない場合5億ウォン(約5000万円)を超える場合には相続税の申告が必要となります。

 

なお、相続人が韓国居住者の場合には、韓国の相続財産が基礎控除額以下の場合であっても相続税申告をしておいた方が有利な場合もあります。

不動産を相続したら?…「韓国税法」で気をつけたい点

不動産を譲渡すると譲渡価額と取得価額の差額に対して譲渡所得税が課されますが、相続により取得した不動産については、亡くなられた被相続人が実際に取得した取得価額ではなく、相続した価額に取得価額が改められます(韓国税法の規定であり、日本税法とは異なります)。

 

そのため、不動産鑑定評価などにより相続時の「時価」で申告をしておきますと、「時価」まで取得価額を引き上げることができます。

 

相続税の申告義務がなく相続税の申告をしていない場合には、公示価格で相続を受けたものとされて、公示価格に取得価額が変更されます。公示価格は国土交通部長官が毎年調査・算定して公示するものです。譲渡所得税など各種税金賦課の基準となるものであり、土地の場合は、公示地価といいます。

 

公示価格は一般的に時価より低いので、結果的に改められる取得価額が低くなり、譲渡した場合には譲渡所得税が増える可能性があります。相続した不動産の譲渡を予定している場合には、相続財産が基礎控除額以下で申告が不要な場合であっても、専門家に鑑定してもらった価額をもって申告しておくと売却時の譲渡所得税を減らす効果があります。なお、発生した鑑定手数料は、相続申告時の控除対象となります。

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本稿は筆者が令和3年5月現在の情報に基づき、一般的な内容を簡潔に述べたものである為、その内容の正確性、完全性、最新性、信頼性、有用性、目的適合性を保証するものではございません。実際の判断等は個別事情により取り扱いが異なる場合がありますので、税理士、弁護士などの専門家にご相談の上ご判断下さい。

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