重要事項説明書に相当する物件説明書は存在するが…
土地や家を買うとき、通常皆さんは不動産業者から、あるいは不動産業者を介して購入する。この場合、不動産業者は、売主として、または仲介人としての責任を負うことになる。買う方の立場としては、法律(宅地建物取引業法)により守られていることになる。不動産業者は重要事項説明書と呼ばれる、物件の説明書を作成し、十分、買主に説明をせねばならず、この説明に誤りがあれば、相応の責任をとらねばならない。
さて、競売不動産についてはどうかといえば、一般的には、買受けにあたって、不動産業者は介在しない。敢えていえば、裁判所がこれに替わる立場ともいえるが、先に述べた責任の部分においては心もとない(第3回参照)。
裁判所には、物件の説明書として、基本的に「物件明細書」・「現況調査報告書」・「不動産評価書」の通常三点セットと呼ばれているものが備え付けられている。一般の取引における、重要事項説明書にあたるものと考えてよいだろう。これらの書類は、各物件ごとに必ず作られているわけだが、項目によっては重要事項説明書ほどには詳しく書かれてはいない。
例えば、執行官が作る「現況調査報告書」など、債務者の協力が得られないこともあって、内容が十分とはいえない。短い時間の現地調査に基づき作成されていることもある。内容も粗削りになるのはやむを得まい。しかし、私たちが競売不動産の買受けを検討するとき、これら以外の資料は与えられないのであり、記載されている項目一つ一つについて、自分の力で、よく理解せねばならない。
専門家への相談の手間を惜しまない
なかでも問題となるのは、やはり引渡しに関することだろう。引渡命令が発令されるか否かは、物件を買い受けるにあたっての最重要チエックポイントである。
しかし、この件について、裁判所の資料には明確な記載がない。裁判所としては引渡命令が発令されるか否かについては、事件記録の内容から事件記録閲覧室などに備え付けてある詳細説明のファイルなど(「BITシステム」においても公開している)を参考にして買受人が自ら判断することを求めている。引渡しに関することだけでなく、接道関係、都市計画関係などについても、裁判所の資料のみで判断できないことも多い。必要に応じ、官公署などで調査等をせねばならないだろう。
しかし、何より大切なことは、自分一人だけで判断しないことだと思う。物件の財産性や法的問題など、それらのことに明るい専門家や弁護士への事前相談を、なるべく行うのが得策だろう。要所要所をきっちり押さえていけば、競売不動産は決して危いものではない。お宝を手にいれるには、慎重さも必要というわけだ。事前相談などに要する費用を惜しんで、とんだ大けがをしたのでは、何にもならないだろう。競売での購入はまさに「自己責任で」というわけである。