入札の裾野を広げた「民事執行法の改正」
民事執行法が制定された後、1990年代にバブル経済が崩壊し、それに伴い競売物件が急増しました。開かれた制度になったはずの不動産競売でしたが、それでもなお、入札の裾野を広げるにはまだまだ改良の余地がありました。買受人がより安心して入札できる制度へ、そしてそれにより競売不動産の円滑な売却を進めるため、民事執行法は数度改正されてきました。
以下がその主な経過であります。民事執行法は短期にまさに進化の歴史を持った法律ですね。
●1996年
・使用借権者に対し、引渡命令発令へ
それまでは無償で住んでいる占有者には明渡訴訟を提起しなければなりませんでした。競売妨害に利用されることもありましたので、対処されました。
●1998年
・執行抗告に制限設ける
抵当権の所有権移転登記との同時設定登記可能に(民事執行法82条2項の申出の記載参照)
・執行官調査権限拡充
それまでは、電気やガスの名義調査の権限を、執行官は持っていませんでした。この改正で、より確かな占有状況が現況調査報告書に記されるようになりました。
●2003年
・短期賃借権廃止
・明渡猶予制度制定
相手方不特定での保全処分可能に
●2004年
・最低売却価額制度から売却基準価額制度へ
競落する業者の顔ぶれは時代とともに変化していく
かつて(民事執行法施行前)、不動産競売の売却場は競売業者によって占められていて、一般の人はなかなか入札に参加できない状況であったといわれます。裁判所内に売却場があるのにもかかわらず、売却場の入口にコワモテのお兄さんが立ちはだかっていたというのですから、さぞ異様な光景であったに違いありません。
こういったことがあったので、民事執行法第65条に売却の場所の秩序維持というくだりが設けられたのでしょう。さて、親子二代にわたり、競売不動産を扱っているという業者が、かつてこんなふうに語っていました。
「昔は取れる(落札できる)物件があらかじめ分かった。予定が立てやすかったのだが・・・今は誰が入れてくるか分からず、やりにくくなったよ。そこで最近は、占有状況が複雑な物件で、公告される前にその裏事情をつかみ切れるものだけを扱っているんだ。他の人が入れやすい物件はなかなか取れないからね。」
時は流れ、今やこの業者さんもほとんど入札していないようです。競落する業者の顔ぶれは時代とともに変わっていきます。ただ、やはり、入札者の中心になるのは不動産業者ではあります。