占有者との交渉、そして代金納付
売却許可決定後1週間は、執行抗告期間である。執行抗告がないことを祈りつつ、期間の経過を待った。
1週間が経過し、無事執行抗告も無かったことから、占有者への通知をすることとした。裁判所に売却許可決定謄本を申請し、これを受領。占有者へ以下の内容を記した差出人を田中さんとした通知文を作成した。
所有権が2014年9月下旬から10月上旬に差出人へ移転すること。
所有権移転後は遅滞無く明渡しをお願いしたいこと。
明渡しに際しては引越し費用の提供を考えていること。
作成後、売却許可決定謄本の写し(金額のところは伏せてコピーを取った)を添付し田中さんの名前にて郵送した(丸山氏本人宛「親展」とした普通郵便にて)。
田中さんの連絡窓口として当方の電話番号などを記載しておくと、2日後、丸山氏から当方に連絡があった。丸山氏はこの電話で、本物件を使用しているのは自分および橋本である旨を告げた。橋本には一部屋のみ自分が貸し付けているのだという。明渡しについては、出ていかなければいけないことは分かっているが、当方の条件次第であるとのことだった。
それとなく希望条件を聞いてみると、約200万円程度は欲しいとのことである。というのも、一部屋貸してある橋本への借金返済だけで100万円かかり、自分の移転費用を考えるならば、それ位の金額になるというのである。一応の言い分を聞いた後、後日連絡をする旨伝え、先方の連絡先を控えた。早速、田中さんと善後策を協議した結果、明渡費用はなるべく当初予算内とするため、次の方針を決定した。
①代金納付を早め、3週間後程度とする。
②代金納付と同時に引渡命令を申し立てる。
③引渡命令が発令されてから、占有者と交渉し、できる限り当初の明渡費用での決着を図る。
占有者も、引渡命令書が送達されれば、歩み寄る姿勢を見せるだろうと計算したのである。代金納付期日を書記官と打合せ、前倒しを図るとともに、融資銀行にも、このスケジュールを知らせた。
時は経ち、代金納付の日がやってきた。前の日のうちに裁判所へは残代金を、そして登録免許税も税務署に振込みが終わっている。代金納付に必要な書類、そして引渡命令申立書、申立書添付の物件目録、当事者目録をそれぞれ作成し、東京地裁民事執行センター不動産配当係のところへ赴いた。代金納付、そして引渡命令申立ては無事終わった。
合意書の締結後、無事に明渡し完了
引渡命令の申立ては、その相手方を「(株)エス・コーポレーション」およびその代表者である丸山氏、そしてさらに第三者の占有者橋本氏としていたが、申立てから約5日後、無事引渡命令が発令され、命令書が送達された。その後田中さんと相談の上、明渡費用60万円、明渡期限10月末日との条件を記した文書を作成し、これを先方に郵送したところ、丸山氏から応諾の旨連絡があった。
これを受けて、明渡しの意思を確定するためにも合意書を作成することとし、案文を呈示させていただき、下記に掲げた内容で作成することとした。その後丸山氏に連絡し、田中さんと丸山氏との間で無事当該合意書を締結していただき、無事明渡しが完了、田中さんは晴れて買受物件を手に入れたのである。当初の予算に比し、内装工事費がやや多くかかってしまったものの、あとはほぼ予定通りに進んだ。内装工事も終わり、鍵の交換も行った。もちろん、管理会社への滞納管理費も納めた。入札を決心してから4ヶ月半あまり、競売不動産入手のドラマは、ここに幕を閉じたのである。