患者さんの不安を和らげたい…「待合室にぴったりな曲」4選 (※画像はイメージです/PIXTA)

「体調が悪い」「怪我をした」「子どもやお年寄りの付き添い」など、患者が来院する理由はさまざまであるが、訪れた時は大なり小なり気分が沈んでいる。しかし医師としてはやはり、病院を出るときには、多少は気分が晴れた状態で帰って欲しいもの。そのために一番重要になるのは、医師や看護師の対応だが、待合室に流れる音楽もまた、患者の気持ちの変化に一役買うだろう。今回は、待合室で流すと患者が癒やされるような音楽について、音楽評論家でジャーナリストの平賀匡氏に、曲の背景も含め解説してもらった。

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看護師や受付スタッフの雰囲気を良くする効果も

待合室で流れる音楽には、患者の不安を和らげるのを助ける効果が見込めるほか、看護師や受付スタッフの雰囲気を良くするのにも役立つことでしょう。ここではおすすめの4曲を紹介します。

1.ヨハン・セバスティアン・バッハ ヴァイオリン協奏曲 第2番 ホ長調

J.S.バッハは、この曲が作曲された1720年頃、アンハルト=ケーテン侯国の宮廷楽長となり、収入面でも恵まれました。こうしたなか、彼は有名な無伴奏チェロ組曲やブランデンブルク協奏曲など、数多くの名曲を生み出します。

 

3曲あるヴァイオリン協奏曲のなかで最も親しまれているこの第2番は、第1楽章の冒頭から堂々としたソロヴァイオリンで入り、それを弦楽合奏とチェンバロが支えます。

 

免疫音楽医療学の専門家で、埼玉医科大学短期大学名誉教授の和合治久氏も、高音域を避け、中低音が中心となっているこのような曲を、せせらぎや波の音のようと例え、生活の質を向上させることに繋がると語っています。

2.ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト ヴァイオリンソナタ 第20番 ハ長調 K.303 (293c)

20代になったモーツァルトは、希望に満ちてザルツブルクからミュンヘン、そしてマンハイムへ移ってきました。マンハイムでは有名な交響曲第31番 ニ長調 K.297を作曲していますが、同時期にヴァイオリンソナタを6曲創作しました。そのなかの第20番 ハ長調は、序奏風の小鳥のさえずりのような部分から転調することなく、主役のヴァイオリンにピアノがゆっくりと速度を合わせていきます。このように変音記号が無いハ長調のゆったりとした曲を、同時期を生きたヨーゼフ・ハイドンは「天使の歌声」と称しました。

 

上述の和合氏によると、派手さはないものの安定感があり、全ての音がバランスよく響くこのような曲は、血圧を安定させ、ストレスを減少させる作用があるということです。

3.ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン チェロソナタ 第3番 イ長調 作品69

20代後半になり、難聴の症状が徐々に現れ始めた彼は、その頃自殺を考えたほどでした。しかし、ピアニストを諦め作曲家一本に絞り、人生の希望が見えてきたことで、交響曲 第5番 ハ短調 作品67 「運命」・第6番 ヘ長調 作品68 「田園」・ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 「皇帝」作品73など、代表的な作品を次々と生み出していきます。そのなかで1808年に発表されたのがチェロソナタ 第3番、第1楽章の第1主題。チェロで始まる温かく雄大なメロディが特徴的です。

 

睡眠研究の第一人者で、米国スタンフォード大学教授の西野精治氏は著書の中で、男性の声域に近いチェロの音域は、心と脳に落ち着きを取り戻す効能を持つと記しています。

4.ロベルト・シューマン ピアノ小品集「子供の情景」 作品15

紆余曲折の末、1840年にようやく妻クララとの結婚を叶えたR.シューマンは、8人もの子供に恵まれました。子煩悩だった彼は、大人から見た子供の日常や夢の世界を、合計13曲・約18分の演奏時間に詰め込んだピアノ小品集「子供の情景」を遺しています。タイトル通り、子供にも聴きやすいように、曲の構成は13曲中9曲を長調とし、休符を挟み、温かくゆったりとしたペースで、転調を繰り返しながら進んでいきます。ピアニストであった妻クララは、自らが演奏して子供たちに聴かせると、子守唄のようになったと回想しています。

 

このような落ち着いたピアノ曲は、子供の心身を安定させるためには最適だと、上述の西野氏も語っています。

 

音楽とは世代や立場を超えて人を和やかにする「共通言語」。待合室で流してみると患者の表情が変わっていくかもしれません。

 

 

参考文献

石桁真礼生ほか5名「楽典 理論と実習」音楽之友社、1965年。

ナンシー・B・ライク著・高野茂訳「クララ・シューマン―女の愛と芸術の生涯」音楽之友社、1986年。

西野精治「スタンフォード式 最高の睡眠」サンマーク出版、2017年。

和合治久「聴くだけで脳と体が若返る528Hz『北の国から』CDブック」扶桑社、2017年。

月刊誌「レコード芸術」音楽之友社、各該当号。
 

ジャーナリスト

1977年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒業後、民間企業勤務を経て、上智大学大学院史学専攻博士後期課程満期退学。研究領域は、満洲事変から太平洋戦争に至るまでの日中政治外交史で、同時期の鉄道史を中心に、戦争の裏側を探る。雑誌や書籍等に提供してきた鉄道写真はおよそ2,000枚に及ぶ。4歳の頃からヴァイオリンを始め、広瀬悦子先生に師事。音楽理論に精通し、クラシック音楽評論家としての一面も。特にモーツァルトに造詣が深い。

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