芸能界で「中間管理職」をどう楽しむか
完歩するだけの力もある
道は誰にも行い得られるものである。人にはみな道を行うに足るだけの力がある。
ただその力と道とに大小の差があるに過ぎぬ。
【『渋沢栄一訓言集』道徳と功利】
■芸歴25年は通過点に過ぎない
それぞれの人間には、進むべき「道」があります。道のない人間はありません。ここでは、芸能界という世界の「道」についてお話しします。
僕は今年、「お笑い芸人」になって25年という一つの節目の年になりました。(GGO編集部注:2020年に執筆した時点の数字です)
25年ですが、そんなに短い時間ではありません。会社勤めで勤続25年と言いますと、「定年まであと13年」と言われるほどの時間です。
しかし、僕が生きる芸能界にいると、25 年という時間は短いとは思われませんが、決して長いとも言われません。共演者の方の中に、普通に芸歴50年という方がいらっしゃるからです。
最近、バラエティ番組に出演されている高橋英樹さんなどは、その芸歴50年以上の方です。もう話になりません。僕が25年と言いますと、「まだ若いね」という話になってしまいます。
「松任谷由実」ことユーミンさんにお会いしたときに、「ユーミン先輩、芸歴はどのぐらいですか?」と聞きますと、「芸歴で言うと45年かな」とおっしゃっていました。本格的にステージ活動を始めたのが1974(昭和49)年。僕の誕生年です。「あ~、僕の人生、ユーミン先輩の手のひらだ」と思うようになりました。
幼稚園から小学校、そして中学校、高校、最後は専門学校、それからこの世界に入り、バイトしたとか、仕事が増えてきたとか、レギュラー持てたとか、コンビ解散して一人になった、結婚した、子どもができた、中古だけれどマンション買ったなどの、拙い僕の人生のすべてが、まるまるユーミンさんの芸歴と重なると、僕の人生のBGMはユーミンさんになってしまいます。
僕の人生まるまる芸歴。ユーミンさんは普通に生きているわけです。かないません。この世界にいると、芸歴25年は何の自慢にもならない単なる通過点でしかありません。だから、「心はいつも半ズボン」と言っていられるのかなと自虐的になったりします。若くいられるのかもしれません。
先輩たちがいっぱいいるので、途方に暮れます。代表的な長寿社会のモデルケースです。
ただ、この世界のすごいところは、世代を超えて人間関係が構築できることです。そう考えると、「中間管理職」をどう楽しむかにかかっていると思ったりするのです。
ビビる大木