※画像はイメージです/PIXTA

岸田総理は経済対策として現金給付を検討している模様です。しかし、漫然と行えば狙った効果が得られず、国民にも不満が残る結果となりかねません。筆者は、最も効果を狙えるのは「経済的弱者」の立場にある世帯への集中投下だと考えています。どういうことなのか、詳しく見ていきましょう。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

給付の目的が格差是正ならば税金で賄うほうが合理的

弱者に現金を配布するとなると、財源の問題が出てきます。景気対策としての配布であれば、財源は国債でしょう。景気対策で現金を配る一方で増税をしてしまっては、景気がよくなりませんから。

 

しかし、景気対策の必要がなく、目的が格差是正であったり少子化対策であったりするならば、国債発行によるのではなく、増税によって賄うことが望ましいでしょう。

 

筆者の唱える少数説は相続税と固定資産税の増税です。不労所得である遺産に課税することと、東京一極集中を緩和するために固定資産税を増税するのです。もっとも、これは超少数説でしょうから、他の増税も要検討なのでしょう。

曖昧な「経済的弱者」の定義…基準作りのための議論を

日本では、「金持ちに課税しろ」というと所得税の累進税率を引き上げろ、といった話になるわけですが、所得は少なくても巨額の資産を持っている高齢者が日本には大勢います。彼らは所得が少ないので住民税が非課税になるなど、「弱者」として扱われているわけです。これは、国民感情に反していますね。

 

所得と資産を総合的に勘案して強者と弱者を判断すべきであって、その基準作りのためには国民的な議論が必要だと思います。

 

もうひとつは、人々のもつ資産の残高を効率的に管理できるように、マイナンバーを預金口座や不動産登記簿等に紐付けすることを認めるべきです。マイナンバーの利用拡大には拒絶反応を示す人も多いようですが、行政が効率化するのは納税者として望ましいことだと思いますよ。

 

財源を論じる際には、「子ども手当は富裕層には配布しないと決めれば、必要な財源が少なくてすむ」といった議論が出てくるわけですが、それはあまり意味があるとは思えません。

 

富裕層が全体に占める比率は小さいので、節約できる金額は多くありませんし、一方で富裕層を配布対象から排除するために手間がかかり、配布作業が遅れたりしかねませんから。

 

富裕層にも子ども手当等は配ったうえで、累進課税を強化するのか金融資産課税をするのか、といった議論をしたほうが生産的でしょう。

 

今回は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、わかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

 

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塚崎 公義
経済評論家

 

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