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「経済的弱者」への現金給付の効果
岸田総理は弱者への現金給付を考えているようです。それ自体はいいと思いますが、具体策においては検討すべき点も多いと筆者は考えています。
本稿では仮に、経済的弱者を国民の20%、富裕層を国民の5%、それ以外を「庶民」と呼ぶことにしましょう。弱者は支援を必要とする人々、強者は負担を増やしてもらいたい人々、といったイメージですね。
貧困に苦しんでいる人は少なくありません。たとえば、老後の蓄えが底を突きそうな高齢者たち、シングルマザーたち、非正規労働者として生計を立てているワーキング・プアと呼ばれる人たち等の大半は、経済的弱者といえるでしょう。
そうした人々に現金を配布するのは、人道的な立場からも格差是正の立場からも望ましいといえるでしょうし、景気対策としても有効だと思います。庶民に現金を配っても老後のために貯金されてしまうかもしれませんが、弱者に現金を配れば消費されるので、需要に結びつくからです。
問題は、貧富の格差はどの程度が好ましいのか、ということですね。貧富の格差が大きすぎるのは問題ですが、小さすぎても人々が勤労意欲を失ってしまうリスクがあるので、どの程度の所得再配分が好ましいのか、国民的な議論が必要でしょう。
子育て世帯への恒久的な現金給付は、景気対策に効果的
子ども(子育て世帯)に現金を配ろう、という考え方もあるでしょう。これは、貧富の格差是正という観点ではないでしょうから、期待される効果としては「景気対策」と「少子化対策」といったところでしょうか。
富裕層は別として、庶民であっても子育て世帯は受け取った金を消費する割合が一般庶民より高いでしょうから、子育て世帯を狙って現金を給付することは景気対策になるはずです。
少子化対策となるか否かは、時限立法なのか恒久的な措置なのかによって異なります。今年限りの支援であれば、少子化対策には役立たないでしょうが、恒久的な措置であることが保証されれば「それなら子どもを育てることができそうだ」と思う人が増えると期待されるからです。
景気対策としての現金給付は議論の余地あり
もっとも「そもそも景気対策が必要なのか」という議論は必要です。これまでは新型コロナによる外出自粛のせいで景気が悪かったわけですが、緊急事態宣言も解除され、人出は戻りつつあります。
富裕層のみならず、庶民も金を持っています。10万円は受け取ったし、1年以上も飲み会に行っていないので、懐が暖かいのです。それなら、新型コロナが収束すれば、旅行や飲み会が激増して景気が一気に回復するでしょうから、景気対策は不要かもしれません。
一方で、新型コロナが再度蔓延すれば、再び不況となるでしょう。その場合には、観光業や居酒屋等が集中的に被害に遭うはずですから、支援もそうした人々に集中的に行うべきでしょう。
新型コロナとは無関係な弱者にも金を配るという選択肢は、景気対策にもなるので否定しませんが、庶民に金を配っても、どうせ旅行にも飲み会にも使えないので、配布先は弱者に限定すべきですね。
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