プロ野球はセ・パとも2年連続最下位からの優勝…「コロナ禍からの回復」を示唆するデータ (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『身近なデータで見た経済動向』を転載したものです。

 

11月のトピック

「生産・輸出・景気動向指数など足元弱い経済指標もあるが、新型コロナの新規感染者数の落ち着き、ワクチン接種の進捗などで、緊急事態宣言明けの個人消費などに明るい兆しも。プロ野球セ・パ両リーグとも2年連続最下位からの優勝は、どん底からの持ち直しを示唆する身近なデータに」

10月中国・製造業PMI2ヵ月連続50割れ。日銀の実質輸出・前月比2ヵ月連続下落

10月の中国国家統計局・物流購買連合会・製造業PMIは49.2と、電力不足や原材料価格の高止まりが影響し、前月から0.4ポイント低下し、景気判断の分岐点の50を2ヵ月連続で割り込んだ(図表1)。

 

 

中国国内では足元、製造業だけでなく不動産開発大手の経営危機、新型コロナウイルスの感染再拡大から、不動産開発投資や個人消費の悪化も予想される。22年秋の中国共産党大会を控え習近平政権はそれなりの対応をとるとみられるが、足元に関しては中国の景気の落ち込みが、日本などにも影響する可能性があり要注目だ。日銀の実質輸出・前月比は8月▲3.7%、9月▲6.5%と2ヵ月連続下落した。

 

鉱工業生産指数9月分速報値・前月比は▲5.4%と、半導体不足に加えて、東南アジアでの新型コロナウイルス禍に伴う部品調達難等で、3ヵ月連続の低下となった。経済産業省の基調判断は8月に続き「生産は足踏みをしている」となった。

9月鉱工業生産指数・前月比3ヵ月連続の低下。7~9月期は5四半期ぶり低下

しかし、鉱工業生産指数の落ち込みは9月が底で10月から持ち直すというのが、企業の計画である。鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると10月分は前月比+6.4%の上昇、11月分は前月比+5.7%上昇の見込みである。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、10月分の前月比は先行き試算値最頻値で+2.4%の上昇になる見込みである。先行きの鉱工業生産指数、10月分を先行き試算値最頻値前月比(+2.4%)で延長したあと、11月分を製造工業予測指数前月比(+5.7%)で、12月分を前月比横這いで延長すると、10~12月期の前期比は+1.1%の上昇になる。

 

また、10月分・11月分を製造工業予測指数前月比(+6.4%、+5.7%)で、12月分を前月比横這いで延長すると、10~12月期の前期比は+5.0%の上昇になる。10~12月期は前期比上昇に戻る可能性が大きい状況だろう(図表2)。

 

アニマルスピリッツ指標は10月生産予測調査で▲13.0。弱いながら前月から2.2ポイント改善

経済産業省が製造工業生産予測指数から作成しているアニマルスピリッツ指標はこれまで、翌月中旬に発表されてきたが、10月29日の鉱工業生産指数9月分速報値発表と同時の当月末に結果が発表されるようになった。21年6月の生産予測調査で、アニマルスピリッツ指標は11ヵ月連続のプラスの数値となり、企業の生産マインドは強気の状況が続いていたが、7月~9月の生産予測調査ではマイナスになっている。10月調査は▲13.0である。まだ、弱い数字だが、9月調査からは2.2ポイント改善した(図表3)。

 

9月景気動向指数で、一致CI前月差マイナスに、基調判断は「足踏み」下方修正に

9月分で景気の基調判断は、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」に「改善」から下方修正されると予測する。下方修正の条件は「3ヵ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1ヵ月、2ヵ月、または3ヵ月の累計)が1標準偏差分以上かつ当月の前月差の符号がマイナス」になることである。9月分は一致CIの前月差が下降で、3ヵ月後方移動平均は9月分単独で前月差が1標準偏差分の▲1.00を大きく上回ると予測される。

 

なお、「改善」に戻るためには、「3ヵ月以上連続して、3ヵ月後方移動平均が上昇」が条件だ。10月の一致CI前月差が+5.0と大幅な上昇でも、3ヵ月後方移動平均は10月では前月差上昇に転じないだろう。3ヵ月後方移動平均が条件を満たすのは、早くても11月から来年1月の3ヵ月間だろう(図表4)。

 

 

景気ウォッチャー調査9月先行き判断DIが2013年以来の高水準に

生産・輸出・景気動向指数などで足元弱い数字が出ている。また、7~9月期の実質GDPも前期比でみてマイナス成長が予想される。但し、ここから景気が腰折れるというよりも、悪化は一時的で先行きの持ち直しを示唆する経済指標も多い。代表例は景気ウォッチャー調査だ。

 

9月の景気ウォッチャー調査は、現状判断DIが42.1と前月比7.4ポイント上昇した。現状水準判断DIは33.5と前月比3.9ポイント上昇した。どちらも改善は2ヵ月ぶりだ。新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き、ワクチン接種が順調に進み、緊急事態宣言の全面解除が決まったことで、経済正常化への期待が高まったと思われる。但し、現状に関するDIは7月を上回れなかった。

 

2~3ヵ月先の見通しを示す先行き判断DIは56.6と12.9ポイント上昇と大きく改善した。景況判断の分岐点になる50を超えるのは3ヵ月ぶりで、56.6は13年11月(57.6)以来歴代5番目の高水準である。9月調査で現状判断と先行き判断に改善の差が出たのは、景気ウォッチャー調査の調査期間が25日から月末まである一方、政府が緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の全面解除が10月1日だったことが影響していよう。緊急事態宣言下で厳しい状況が続いている中では、現状判断は厳しめになっただろう。一方、宣言解除が決まっていることから期待が高まり先行き判断は大幅に改善したのだろう(図表5)。

 

 

G7で2番目のワクチン接種完了割合に、ワクチン関連判断DIは判断分岐点50超

全国の新型コロナウイルス新規感染者数は10月7日の972人以降31日の229人まで千人を下回っている。8月13日から9月1日まで13回見られた2万人台に比べ、落ち着いた状況が続いている。減少原因はよくわからないようだが、順調なワクチン接種が大きな要因のひとつだろう。首相官邸HPによると接種完了者が10月29日には71.2%と全人口の7割超になっている。ワクチン接種が完了した割合を他のG7諸国とNHKのHP掲載のデータで比較すると、9月22日にワクチン接種完了割合は、米国を抜き、その後ドイツ、英国、フランス、イタリアの順に追い抜き11月1日更新データで、G7で一番高いカナダ次いで第2位まで上昇している。

 

新型コロナウイルス関連判断DIを作成すると、9月分の現状判断DIは44.2で前月比15.2ポイント上昇し2ヵ月ぶりの改善になった。先行き判断DIは58.9で前月比18.3ポイント上昇し、新型コロナウイルスが景気ウォッチャー調査に登場した20年1月以降の最高水準を更新した。現状判断、先行き判断とも新型コロナウイルス関連DIは全体DIを上回り、新型コロナウイルスが景況感の足を引っ張らなくなったことを示唆している。ワクチン接種が進む中、9月のワクチン関連判断DIは現状が55.3、先行きが67.1と判断の景況判断の分岐点50を大きく上回っている(図表6)。

 

 

10月消費者マインドアンケート調査、「暮らし向き」判断、コロナ禍で3番目に良い内容

内閣府が実施している消費者マインドアンケート調査は、毎月20日を調査期間最終日とし、22日頃には当月分(前月21日~当月20日)の集計結果が発表される速報性のある調査である。「消費者マインドアンケート調査」は、質問数が「暮らし向き(半年後)」と「物価見通し〈1年後〉」の2問と少なく、判断は5段階の中からひとつ選ぶだけで、スマホなどで簡単に回答できる。従来の調査では調査対象に選ばれないと回答できないが、消費者マインドアンケート調査は、誰もが自発的に参加できる点が画期的である。

 

結果は内閣府「消費動向調査」のHP上に掲載されるが、残念なことに試行的な調査ということもあってか、新聞には掲載されたことがない(11月1日現在、日経テレコンでの検索結果0件)ので、知っている人は少ない状況だ。

 

21年10月の結果は10月22日に公表された。回答数136人で、「暮らし向き」に関し、「良くなる」3.7%、「やや良くなる」11.8%、「変わらない」44.9%、「やや悪くなる」23.5%、「悪くなる」16.2%だった。この結果について、景気ウォッチャー調査と同様の手法でDIを作成すると40.9となり、8月36.8、9月37.3から改善した(図表7)。コロナ禍の20年1月以降では3番目に良い数字である。

 

 

調査期間の9月21日から10月20日での、全国の新型コロナウイルス新規感染者数減少傾向、ワクチン接種の完了割合上昇、10月1日全ての都道府県で緊急事態宣言が解除。こうした状況下で回答された、「暮らし向き」判断の改善がコロナ禍からの回復を示唆している。

10月東京都区部CPIコア前年比2ヵ月連続+0.1%、「物価」判断、デフレ色ほぼ払拭

足元、原油価格の上昇、それを受けてのガソリン価格の上昇などが話題になっている。10月25日時点のレギュラーガソリン1L当たりの全国平均・店頭価格は、167円30銭となった。値上がりは8週連続で、原油価格の高騰が響き、2014年9月以来、約7年ぶりの高値である(図表8)。目先はOPECプラスが11月4日の会議で増産を決めるかどうかが注目される。

 

 

10月中旬速報値の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)前年同月比は0.1%上昇した。上昇は2ヵ月連続で、9月は14ヵ月ぶり上昇だった。エネルギー項目などの上昇が全体を押し上げたが、携帯電話の通信料が大幅にさがっているため、前年同月比は落ち着いた動きになっている。消費者物価指数の前年同月比は、当面、プラス幅を緩やかに拡大していくと予想される。

 

なお、10月の消費者マインドアンケート調査の「物価見通し」では、「やや低下する」が1人で0.7%、「低下する」という回答はなかった。これまでで「低下」方向の回答が最も少なかったのは、19年3月であった。回答数が122人と少なかったので、「低下する」が1人で0.8%。「やや低下する」という回答はなかった。10月では回答比率で、低下方向は僅かに0.7%と統計史上最低を更新した。デフレ懸念がほぼ無くなったことを示唆する数字である。

長良川の鵜飼観覧船・乗船人員・前年同月比は9月の10割減から10月は2割増に

緊急事態宣言が解除された10月1日以降、多くの観光地やレジャー施設でそれまで制限されていた人出が増加した。既に10月の前年同月比がわかっているのが、岐阜市の長良川の鵜飼観覧船・乗船人員だ。長良川の鵜飼は、通常は毎年5月15日~10月15日に行われる。今季は新型コロナウイルスの影響により、41日遅れで6月21日に開幕した。

 

緊急事態宣言や大雨の影響で、注視日数は昨年の55日を超え過去最多の90日に及んだ。鵜飼い観覧船事務所によると、今季の観覧船・乗客人員は過去最少の1万3,910人(前年比▲9.1%)だった。9月の乗船人員はゼロで前年同月比10割減だったが、緊急事態宣言が1日に解除された10月は一昨年の水準を下回るものの、前年同月比は約2割増になった。足元のコロナ禍からの回復を示す指標のひとつだろう(図表9)。

 

 

9月の景気ウォッチャー調査のサービス関連のうちの「旅行・交通関連」の現状判断DIは6月43.8、7月46・7だったがコロナ禍で8月は22.9まで低下した。9月には37.8に戻った。先行き判断DIは9月に67.4になった。これは過去最高水準だ。

 

同様に「レジャー施設関連」の現状判断DIは6月44.0、7月54.2、8月28.7、9月には46.2になった。先行き判断DIは9月に62.5になった。これは06年2月・3月分に次ぐ過去3番目の水準だ。

 

こうしたデータからみて、多くの観光地やレジャー施設の10月のデータが長良川の鵜飼観覧船・乗船人員同様、「コロナ禍からの回復」を示すことになろう。

プロ野球はセ・パとも2年連続最下位からの優勝。下町ボブスレー3度目の正直なら人々に自信を

2月の冬季オリンピック北京大会まであと3ヵ月となった。これから冬季オリンピックの話題も多く報じられそうだが、人々の景況感との関係で注目されるのが「下町ボブスレー」の動向だろう。東京都大田区の町工場が力を合わせてボブスレーのそりの開発を進めている「下町ボブスレー」は、近年、冬季オリンピックの時期に話題になっている。

 

2011年に大田区産業振興協会が高い技術力を国内外にアピールするため、ボブスレーの国産そり製作を発案した。最初の冬季オリンピック14年ソチ大会では1~2号機は日本代表が試用したものの、選手からの多くの要望に応えられなかったため、採用が見送られた。18年平昌大会ではジャマイカ代表がいったんは採用を決めたが、大会直前になって採用取り消しとなった。

 

コロナ禍による業績悪化で撤退する工場が相次ぎ、現在製作に携わっているのは23社にとどまるものの、日本代表を指導していたドイツ人技術者と共同でそりを開発し、現在イタリア代表に提供しているという。ワールドカップでオーストリア製のそりと併用され、結果が良ければ北京大会で採用される可能性があるという。

 

今年のプロ野球は、セ・リーグ優勝がヤクルト、パ・リーグ優勝がオリックスだ。セ・パとも、2年連続最下位からの優勝である。今年のプロ野球のペナントレース同様に、「下町ボブスレー」が2大会連続不採用から3度目の正直の採用になり、日本の下町の技術力を改めて世界に発信することができれば、「あきらめなければ夢がかなう」と、コロナ禍で打ちのめされた人々に勇気を与えるニュースになろう。

 

一方、コロナ禍でも順調に推移している身近なデータは多い。例えば、競馬売上高が挙げられる。JRA(日本中央競馬会)の売得金は20年では無観客レースになったことで一時落ち込んだが、ネットでの馬券購入が増加し持ち直し、前年比+3.5%と9年連続の増加になった。21年は10月24日時点までの年初からの累計前年比は+4.5%の増加になっている(図表10)。10年連続上昇に向けて順調に推移している。

 

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『プロ野球はセ・パとも2年連続最下位からの優勝…「コロナ禍からの回復」示唆するデータ』を参照)。

 

(2021年11月1日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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