猛禽類に攻撃されたことも…ドローンによる医薬品配送は可能か (※画像はイメージです/PIXTA)

政府はオンライン診療を普及させる方針で、2018年にはガイドラインも発表していました。現在、新型コロナウィルスの流行を受けて、この動きが加速しています。将来的にはドローンによる薬剤の配送も検討されており、各地で実証実験も行われていますが、医薬品を患者宅へドローンで配送するというのは、本当に可能なのでしょうか。

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新型コロナウィルスの流行で特例措置も

2020年4月、新型コロナウィルス流行期間中の非常時の対応として、オンライン診療を希望する患者がオンライン診療を利用できるように制度を見直すことが閣議決定されました。

 

これを受けて厚生労働省は、あくまでも「時限的・特例的取扱」として、調剤した薬剤を郵便書留などで確実に患者に届けることや、温度管理など品質の保持に特に注意が必要な薬剤などは薬局のスタッフが届けたり、家族が取りに来るよう求めるなど、工夫して対応するよう、保健所などに通達しています。

ドローンによる医薬品配送のガイドライン

政府はドローンによる医薬品の配送も検討しています。内閣官房と国土交通省が2021年6月に発表したガイドラインによると、薬局や医療機関は、患者がどのような薬を使っているのか、わからないようにプライバシーに配慮した上で配送し、もしもドローンが墜落・不時着した場合は、薬剤を直ちに捜索・回収しなくてはいけません。

 

迅速に薬を届ける必要があるので、墜落・不時着した場合の代替措置を事前に検討し、対応できるように備えることも求められています。

 

さらに、第三者が墜落・不時着したドローンを見つけたとしても、荷物を開封できないように鍵をつけるなど、対策をしておかなくてはいけません。

 

ガイドラインを見ると、薬局や病院にとって、ドローン配送はずいぶん手間がかかるようです。窓口で渡す方が簡単ですし、ドローンを飛ばすためにエネルギーを使う必要もないので、省エネにもつながるのではないでしょうか。

ドア・ツー・ドアの配送は困難?

内閣官房と国土交通省が発表したガイドラインは、ドローンの飛行レベルを4段階で示しています。

 

「レベル1」は目視での操縦飛行、「レベル2」は目視での自動・自律飛行、「レベル3」は無人地帯での目視外飛行です。目視外飛行とは、飛行ルートの一部がドローンの操縦者から見えなくなる場合に、補助者がドローンを監視してそのアドバイスに従って飛行させることです。「レベル4」は有人地帯で補助者なしで目視外飛行をすることで、政府は2022年までに「レベル4」の実現を目指しています。

 

このガイドラインでは、風速5m/秒以上の時や、雨や雨になりそうな時や、十分な視界が確保できない雲や霧の中での飛行を禁止しています。風速5m/秒以上とは、木の葉や枝が揺れる程度の風です。つまり、晴天で風がごく弱い時にしか、ドローンで配送することはできません。

 

現在の航空法ではレベル4の飛行は認められていないので、無人地帯を飛行するか、有人地帯の場合は、飛行ルートの下を立入禁止にする必要があります。

 

離着陸をするのは、グラウンドや空き地など視界を遮るものがなく、落下リスクの小さい場所を選ばなくてはいけません。薬局や病院から患者の自宅まで、ドア・ツー・ドアの配送というわけにはいかないようです。

 

また、墜落のリスクを避けるため、民家や道路・鉄道の上空を避け、地図に記載されていない送電線の有無を確認した上で、山林や河川、海上を飛行ルートとして選択しなくてはいけません。

 

もしもドローンが墜落した場合、バッテリーなどが原因で森林火災が発生する恐れもあります。その場合は警察や消防、森林管理署へ連絡することも求められています。

 

ドローン本体や荷物が落下して、人や建物に被害を与えた場合に備えて、賠償責任保険への加入も求められています。被害者が死亡したり、後遺症が残るような重大な事故が起きた場合、賠償金も高額になるおそれがあります。

ドローンを攻撃する猛禽類

このガイドラインでは、希少な野生生物が生息している地域では、ドローンが接近したり発生する音によって過剰なストレスを与える可能性や、ドローンの落下で負傷させる可能性があることに触れています。

 

そのため、国立・国定公園に限らず、野生生物の生態に悪影響を及ぼさないよう配慮を求めています。希少な野生生物が生息する地域では、ドローンの飛行ルートを選ぶ前に、環境アセスメントを行って、生息域を確認しておく必要もあるのではないでしょうか。

 

たとえば、風力発電所周辺では、風車のブレード(羽根)に野鳥が衝突するバードアタックを減らすために、希少な野鳥の生息域を設置前に調査し、場合によっては設置場所を変更すると言った対応が行われています。

 

一方、猛禽類がドローンを攻撃して墜落させるリスクもあります。実際に、南北アメリカやヨーロッパ、オーストラリアでは、猛禽類によるドローンの攻撃が頻発しています。オーストラリアでは翼幅2.5メートル、重量6.4kgのドローンも攻撃されました。

 

食物連鎖の頂点にいる猛禽類は天敵がいないので、恐れずに向かってくることが一因として考えられています。この性質を利用して、フランス空軍などは、テロ対策としてドローン捕獲用のワシを利用しているほどです。

 

オンライン診療を利用する患者は、山間部や離島など病院への移動が困難な地域に住む人が多いと想定されますが、こういった地域では猛禽類などの影響も考えられます。確実に医薬品を届けるために、ドローンによる医薬品の配送が最善の方法なのかどうか、検討する必要がありそうです。
 

 

環境ジャーナリスト

1966年北海道生まれ。おもに、化学物質や電磁波、低周波音など環境因子による健康影響をテーマに執筆。『シックスクール問題と対策』(緑風出版)など著書多数。スウェーデンのオーレ・ヨハンソン博士(カロリンスカ研究所准教授・当時)と共に日本の電磁波過敏症発症者の実態調査をまとめた共著論文(Pathophysiology. 2012 Apr;19(2):95-100.)を発表

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