世界一「高いニッポン」が引き起こした悪循環
「安いニッポン」はいいこと、変える必要はない、ここから好循環が始まる、と考えるべきではないか。
なぜなら「高いニッポン」が悪循環の出発点だったからである。この「高いニッポン」が円高でさらに高くなり、日本の価格競争力は劇的に低下した。日本凋落の根本原因は明確に、価格競争力の低下であり、「高いニッポン」と円高がそれを引き起こしたのである。
90年代前半の物価高が日本経済衰弱の始まり
1990年代前半、日本は世界一の高物価国であった。ホテル料金から何から何まで世界で一番高かった。皇居の地価と米国カリフォルニア州の地価がほぼ同じであった。株価も高かった。1990年世界時価総額トップ10の銀行は9位までが日本の大手都市銀行で占められていた。
筆者は1995年「異常な日本の物価高、内外価格差の拡大」の分析を国会において参考人として証言し、国内の高コスト構造と円高が原因であると説明した。そこからの坂道を転がり落ちるような物価・資産価格の下落が起き、同時に日本経済の急激な衰弱が始まった。
「安いニッポン」は日本経済復活の起動力に
しかし今、物価・賃金安に加えての円安で、日本企業の価格競争力は過去30年間で初めて上向いている。「安いニッポン」は日本企業の低コストを意味するので、今後日本企業の収益の向上が期待できるだろう。
海外生産している企業にとっては海外法人利益の円換算額の増価という形で現れる。企業の支払い能力の向上と技術労働者の需給ひっ迫から賃金上昇に結び付くだろう。国際競争力向上はグローバル製造業と、数年後に急拡大が予想される観光関連国内産業で顕在化すると考えられる。
このように「安いニッポン」は日本経済復活の起動力になると考えられる。日本の失われた国際購買力の回復(ズワイガニを再び日本人が口にできること)は、企業の国際競争力回復があって初めて実現できる。今大切なことは円安を進めるために、超金融緩和をできる限り持続させることである。