高齢化が進展する日本では、認知症は非常に身近な問題です。もし被相続人が認知症になってしまったら、相続対策の選択肢は限られたものだけとなり、相続も非常に困難かつ不本意なものになりかねません。そのような事態を回避するには、早い段階で「遺言書」作成を進めることが大切です。多数の相続問題の解決の実績を持つ司法書士の近藤崇氏が解説します。

「認知症=遺言能力がない」ではないが…

法律的には、認知症があるからといって、遺言が残せないということにはならない。しかし、認知症は人によって進行が違う。そのため、状況によっては「遺言能力なし」と判断されるケースもある。法的な判断ができる能力がある場合と、意思能力がない場合の2つのパターンを考えて見よう。

 

●法的な判断ができる意思能力がある場合

この場合は、速やかに「遺言」を残すことをお勧めする。

 

遺言には、すべて自筆で書く「自筆証書遺言」と、公証人の協力を得て作成する「公正証書遺言」がある。「自筆証書遺言」の場合、専門家や証人の目を通さないため、各法律要件を満たしていないケースが少なくない。さらに、遺言書が有効であっても、被相続人が亡くなったあと、家庭裁判所の検認手続きを経なければならないため、かなりの時間と手間がかかってしまう。

 

一方の「公正証書遺言」は、専門家や証人が立ち会うため、法的に有効な遺言書を作成しやすく、間違いも起こりにくい。また「遺言執行者」を選任しておけば、相続の手続きはさらに容易になる。そのため「公正証書遺言」の作成がお勧めだ。

 

●法的な判断ができる意思能力がない場合

認知症が進行し、事理弁識能力がなく、意思能力もない場合は、残念ながら遺言書を残すことはできない。

 

遺言書がない場合は、遺産分割協議によって相続財産の帰属先を決めることになる。相続人が成人し、かつ意思能力があるなら、遺産分割協議書を作成して署名捺印すれば完了となる。

 

ただ、今回のケースのように相続人のきょうだいに意思能力がない場合は、成年後見人等の制度を用いることになる。具体的には、裁判所に成年後見人の選任を申し立て、成年後見人がきょうだいの代わりに遺産分割協議に参加するかたちになる。

 

いずれの場合も、早めに近くの専門家に相談することが重要だ。

 

 

近藤 崇

司法書士法人近藤事務所 代表司法書士

 

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