急速に進む利上げ織り込み、上向く期待インフレ率
最近の債券市場では幾分、直観に反することが起きているように思えます。
というのは、5年金利が急上昇して利上げ織り込みが急速に進む一方で、「5年先5年の期待インフレ率」も上昇しています。5年先5年の期待インフレ率は、米連邦準備制度理事会(FRB)が「長期の期待インフレ率」の指標として好んで用いるものです。
順序立てて述べると、まず、最近のように、2年金利はあまり上昇していないものの、5年金利は大きく上昇している場合、債券市場は「今から2年以内には多くの利上げはないものの、3年目以降にはかなりの利上げが実施されると見ている」ことを示しています。
シンプルに、2年金利は今後2年間の政策金利の平均値、5年金利は今後5年間の政策金利の平均値と考えることができます。
今回の5年金利の上昇のように、通常、利上げの織り込みが進むと、長期の期待インフレ率は抑制されます。なぜなら(言い換えているだけですが)利上げは、引き締めによって将来の実現インフレ率や長期の期待インフレ率を鎮めるためのアクションだからです。[上の図表2]で言えば、[網掛け]をした2013年(バーナンキ・ショックの頃)がその例です。
ただし、ちぐはぐであれ何であれ、長期の期待インフレ率が2003年以降、観察されてきた「2.5%付近」まで戻りつつあることは良いニュースであり、それはFRBが2015年以降、待ち望んできたことのはずです。