[関連記事]日本の1人あたりGDPは「世界23位」…低賃金と非正規化の実態
【はじめに】すべての経済活動のベースに人口がある
SDGsという言葉を聞くたびに胸が苦しくなるのは筆者だけであろうか。持続可能な開発目標、という言葉が独り歩きしている気がしてならない。
経済を回すのは、経済成長の恩恵を受けるのは一体だれか、と考えると、それは人間、なのだろう。だとすると、その持続可能な開発の恩恵を受けるはずの人口が激減していくことを棚上げして、なにを持続可能に開発するというのだろうか。
私たちは本来の目標を見失いやすい。本来は地域を活性化するはずの経済活動が、その活動を支える人口のSDGsが見失われたままで進められるならば、それは病巣を抱えた人間に対して行う「終末を覚悟した治療行為」にとどまることと同様ではなかろうか。
人口は消費者であり、生産者であり、そして継続的経済活動のディマンドサイド、サプライサイド、双方を構成している。
2020年コロナ禍元年、出生数は戦後最低を更新し、84万人となった。
この84万人という数字を、半世紀前の1970年との比較において減少率ランキングで都道府県別に計算した結果を示しておきたい。
【日本全体では半世紀で6割減少し、出生数は4割水準に】
1970年に生まれた人々はコロナ禍元年2020年に50歳を迎えた。つまり50歳の人口が生まれた時と比べて出生数が何割減少したのかを示したものが下図である[図表1]。
最も出生数が減少したのは秋田県で、75%の減少率となっている。つまり秋田県では、今の50歳男女の1/4水準にまで赤ちゃんの数が減ったのである。秋田県の50歳人口が通学していた小学校のクラスが4組から1組へ、更にいうと4学校を1学校に統合するレベルの大激減である。
秋田県と同様に半世紀で出生数が約7割減少したエリアが、秋田県以外に9エリアも存在している。
東北地方では2エリア(青森県、岩手県)、四国地方では2エリア(高知県、愛媛県)、そして近畿地方の和歌山県、北海道、中国地方の山口県、九州地方の長崎県、北陸地方の新潟県がランクインとなった。
減少の要因については別のレポートに譲るが、47都道府県中10エリアにおいて半世紀で出生数約7割減という、まさに人口消滅を思わせるスピードで少子化、つまり人口減少が起こっている。