(写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、ニッセイ基礎研究所が2021年10月20日に公開したレポートを転載したものです。

5―ワクチンを接種した理由(9月)~「予約・接種済(7~9月)」で自分や周囲のリスク軽減と「打つものだと思っていた」。「希望なし→予約・接種済」では家族の勧めや不利益をこうむりそう、周囲の接種状況

最後に、ワクチンを接種した理由に関して、(1)「予約・接種済(7~9月)」と(2)「希望なし→予約・接種済」を比較した[図表5]。

 

(1)は、自分の感染リスクや重症化・死亡リスクを下げること、周囲の感染リスクを下げること、国内の感染者数を減らすこと等、ワクチンの効用に期待をした積極的な理由が多かった。

 

続いて「打つものだと思っていた」が3割を超えて高くなっていた。これは(2)には見られない傾向だった。

 

また、「自分が打つことによって国内の感染者が減ると思うから」は、(1)では4番目に高かったが、(2)では「周囲の人が接種しているから」「家族に勧められたから」「ワクチン接種済み証明(ワクチンパスポート)を活用した行動緩和策において、不利益をこうむりそうだから」を下回る7番目に挙げられており、(1)で高いことが特徴だった。

 

[図表5]ワクチン接種した(予約した)理由
[図表5]ワクチン接種した(予約した)理由

 

一方、(2)も、自分の感染リスクや重症化・死亡リスクを下げることの選択割合が高かったが、(1)と比べると、20ポイント以上の差があった。

 

さらに、(1)と比べると、家族に勧められたこと、周囲の人が接種していることなど、周囲の人の影響を受けたと思われる回答が多かった。「職場や学校、友人・知人」「医療機関」で勧められた割合は、(1)と(2)で大きな差はなかったことから、家族の勧めが特に影響を及ぼしたようだ。

 

また、「ワクチン接種済み証明を活用した行動緩和策において不利益をこうむりそうであること」が高く、7月移行の感染不安や、治療を受けられない不安の高まりに加えて、接種済み証明(ワクチンパスポート)の利活用の議論が具体化する中で接種を決めた人もいたようだった。

6―おわりに

以上見てきたとおり、7月時点でワクチンを「あまり接種したくない」または「絶対に接種したくない」と回答していた人のおよそ半数が9月の時点でも接種希望がなく、4割弱が9月の時点では予約、または接種を済ませており、1割強が予約は済ませていないものの接種意向をもっていた。

 

(2)「希望なし→予約・接種済」を(1)「予約・接種済(7~9月)」や(3)「希望なし(7~9月)」を比較すると、(2)は、(3)と比べて、7月の時点で感染による健康状態の悪化に不安を感じる割合が高かったほか、9月の時点では、感染しても適切な治療が受けられない不安が大幅に上昇していた。

 

7月の時点でワクチン接種希望がなかったものの、接種をまったく検討していなかったわけではなく、周囲の接種の様子を見ていた人が多かったと思われ、周囲の接種状況や、国内の感染状況、医療ひっ迫の状況等を踏まえて接種を検討したと推測できる。

 

ワクチン接種理由は、ワクチンの効用に期待した回答も多かったが、(1)と比べると少なく、家族の勧めや周囲の人の接種状況、接種済み証明(ワクチンパスポート)の活用に関する議論を考慮して接種したなどの消極的な理由であった人も一定程度あるようだ。(1)との大きな違いとして、(1)は「(ワクチンを)打つものだと思っていた」が3割を超えていることがあげられる。

 

「インフルエンザワクチン接種者の新型コロナワクチン接種意向」でも触れたとおり、ワクチンで感染症を予防しようとする考えには個人差があると考えられた。

※村松容子・岩﨑敬子「インフルエンザワクチン接種者の新型コロナワクチン接種意向」ニッセイ基礎研究所基礎研レポート(2021年8月5日)

 

9月の調査で、「まだ予約していないが、すぐにでも接種したい」は2.8%にとどまり、接種意向のある人はおおむね予約を終えていると考えられそうだ。現在、接種意向がない人は、感染不安や適切な治療が受けられない不安、重症化する不安が相対的に低く、ワクチン接種に対する安全性への不安が高い人やワクチン不要との考えが多い。

 

今後は、感染の再拡大や重症化リスクの高い変異株の出現、自分自身や同居家族が転職や持病の発症等によって感染や重症化リスクが高まったとき、副反応の頻度や程度が現在より低いワクチンが開発されたとき等に接種意向が生じる可能性があるため、必要な時に接種できる仕組みが必要だろう。

 

 

村松 容子

ニッセイ基礎研究所

 

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