野垣クリニック 野垣岳志 院長

医師の道を進むうえで、先人の教えは深く心に留めておくべきものである。それがときに活動の糧となり、指標となることもあるはずだ。『野垣クリニック』の院長である野垣岳志氏も、若き日の師との出会いにより、理想とする医師像が明確化していったという。かつて師に送られた言葉や、医師として目指すべき方向性について語ってもらった。

目指すは柔和なオネエ系医師

外科の仕事のほとんどは悪性疾患の治療であり、基本的には人生の最後までお付き合いすることが前提の治療となります。その一方、肛門科の仕事のほとんどは良性疾患の治療であり、基本的に治ることが前提の治療となります。多くの手術を行っていけば、必ず一定の割合で不具合が生じてしまい、全ての患者さんに完全な満足を与えることは不可能です。美容外科と似ているところがありますが、「必ず治さなくてはいけない」わけではなく「治したかったら手段はありますよ」という疾患や病態であるため、患者さんへの接し方はより重要になっていきます。

 

常に心がけているのはとにかく威圧的にはならないようにすること。診察室に患者さんが入ってきた時から態度には気をつけています。話し方も話す内容も患者さんの不安を取り除くことを最優先にしています。必然的に柔らかい話し方になるためいわゆるオネエ言葉のようになることが多くなります。初対面の方に「先生オネエでしょ」と言われてしまうのはそういう話し方なども強く影響していると思います。もともと声のトーンが高いのも相まってオネエ疑惑が生まれるわけです。

 

手術をした患者さんには緊急連絡先として私が持っている携帯電話の番号が伝えてあり、何か相談事や心配なことがあったらいつでも電話してくださいと言ってあります。深夜や休日などにかかってくることもあるのですが、電話の声というものは不思議なもので、普段よりもより一層高めのトーンで話しているらしくよく女性と間違われます。

 

そもそも私に直接つながる番号ですよと伝えてあるはずなのに、なぜか勘違いをされていることがあり、いろいろな相談事に乗った挙句に「先生に伝えてくださいね」と謎の言葉が返ってくることがあります。「えっと電話に出ているのがその院長自身なのですが」というと「女の人だと思った」と言われます。私が電話に出ていて相談に乗っていたと理解していただけるととても喜ばれます。

 

手術の際にも手術の姿勢をとってしまうと患者さんからこちらの顔は見えなくなってしまう(お尻の手術なので顔は見えないのです)ため、手術をしているのが私ではなくて他の女医(そんな存在はいません)と勘違いされていることもありました。見た目は太ったおじさんですから女性に間違われるわけがないのですが…。

 

それでもこういう話し方で良かったなと思います。患者さんに不安を与えずに本音で話をしてもらうには威圧的な男性よりも、柔和なオネエ系を目指します。師匠のように、「先生に会えてよかった」って言ってもらえるように。

手術を受けた日が記念日に

以前に他誌で書いたことがあるのですが、とても素敵な言葉をいただいたことがあります。その患者さんは何十年と内痔核の脱出症状があって、やっとの思いで受診され、最初は緊張していましたが、私の話をしっかりと聞いてくれて、手術をすることになりました。手術を受けて術後の経過はとても順調でした。ちょうど手術をしてからピッタリ1年が経過した時に来院されました。

 

「ちょうど一年経ちましたね、手術したのが昨年のこの日だったですね」と声をかけたところ、

 

「今日が手術した日と同じだったから今日来たのです。ずっと内痔核で悩んでいた私の背中を押してくれて、手術を受けて本当にスッキリ治りました。今までの私とは違う人生を歩んでいけます。だから今日が私にとっての記念日なのです。歳をとってくると誕生日などはわざわざ祝ったりしなくなりますが、今日という日をこれから毎年大事にしていきたいと思っています。記念日が増えて良かったわ」 

 

師匠の背中はまだまだ遠いですが、どんな患者さんにでも喜んでいただけるような治療を目指して日々努力して行きます。
 

 

 

野垣 岳志

野垣クリニック院長

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