8千人超手術した肛門科医師に聞く「予想外だった患者の言葉」

下半身の問題はデリケートだ。周辺を扱う医師も、患者に対する言葉には気を遣う必要がある。すると、会話のなかで独特の言い回しや表現が生まれることも。『野垣クリニック』の院長である野垣岳志氏が、これまで患者から受けた愉快で心に残る言葉を、エピソードとともに紹介してもらった。

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8000人以上の肛門を治療してきたなかで

肛門科医になって10年間で8000人以上の肛門の手術を施術してきました。肛門科の手術は美容整形に近いものがありますので、手術前後で生活に影響が出ることがあります。ボディイメージの混乱と言いますが、長年罹患していると混乱が生じやすくなります。それを少しでも軽くするために手術を行う前には術後に変化が起こる可能性について説明しています。

 

限られた時間で説明を行なっている上に、こちらとして想像できる範囲内での話になるため、一般的な術後の生活についての内容になることが多いです。ところが、手術をして治癒した患者さんからは時々予想外なお話をいただく事があります。

本人に自分の肛門をモニターで確認してもらう

「手術をしたらトイレが汚れなくなって、掃除しなくても済むようになった」。

 

内痔核の手術を受けられた患者さんの言葉です。初診で来院された時は、常に腫れて脱肛している状態の内痔核であり、一般的な市販薬などを使いながら30年以上生活している状態でした。気恥ずかしさなどから一度も医療機関で肛門の診察は受けたことがないとの事。

 

口数も少なくて、ご不安な様子だったため先ずは緊張をほぐすために世間話をしましたが、たまたま面白い地名の場所に住んでいらしたので地名の話をしながら肛門の診察を行いました。どんな方でも突拍子もない話をすると会話に乗ってきてくれます。

 

肛門の診察を行う際にはビデオ付き肛門鏡という器具を用いますので、本人に自分の肛門がどういう状態になっているかをリアルタイムでモニター画面で確認してもらいながら説明します。「この脱肛したままの状態がもし苦になっているのならば、手術をしないと改善はしないと思うし、治すことにより今までとは生活が変わると思いますよ」と話を続けていたところ、患者さんが思いもよらないことを話し出しました。

他人には恥ずかしすぎて言えない…

「自分のお尻があんな風になっているなんて思ってなかった。実は排便の度に出血があり、便器の中に飛び散ったり、トイレの床が汚れたりするため、奥さんから毎回トイレを掃除するように言われているんだ。俺のお尻はそんなにひどくないと思っていたから、奥さんに汚いとか言われる度に嫌な気持ちになっていたし、そんなことを他人には恥ずかしすぎて言えないから困っていた。子供がトイレを汚すみたいなもんだと思っていた。自分の家庭の話をするのは先生が初めてだよ」

 

もちろんそれがこちらの仕事ですから、もっとなんでも話して下さいねと伝えました。掃除をする度に「なんで毎回こんな苦労をしないといけないんだ」と悩み、トイレに行くのが嫌になっていたそうです。散歩に行って家のトイレではないところで排便したりもしていたとの事でした。

 

初診の時にすぐ手術を希望され、予定を立てて日帰りで内痔核手術を行いました。術後しばらくは術創から滲出液や血液が出るためガーゼをあてがって頻回に取り替える必要があります。通常は一人でできる作業ですが、この方は奥さんが手伝ってくれたそうです。そのため創が治っていく過程をずっと奥さんが観察していました。術後の診察にはいつも患者さん一人で来られていたため、奥さんと顔を合わせることはありませんでしたが、いつも嬉しそうに「奥さんがガーゼ変えるのとかさ手伝ってくれるんだよ」って喜んでいました。

これからはトイレの掃除は週に1回に

手術して2ヵ月が経過し、すっかり創も治った頃にご夫婦で来院されました。

 

「うちの旦那がお世話になりました。手術前は毎日トイレが汚れるのでいつも掃除をしてもらっていましたが、夫のお尻の状態についてはわからなかったため、どうしてそんなに汚すんだろうと思って困っていました。夫が手術をするって言って決めて帰ってきた時に初めてそんなに酷かったんだとわかりました。自分の弱音は他人には言わない人だったので、気付かなかった。病院に行ってくるって言い出したときもびっくりしました。ガーゼ交換をして手術の傷跡を毎日見ているうちにどんどん治っていくのが嬉しかった。手術した次の日からトイレも全く汚れなくなりました」

 

ご夫婦の絆も強まった様子で、こちらとしてもとても満足の行く結果になりました。

 

「こんなことならもっと早く手術すればよかった。先生が最初の時に住所の話をしてくれたから手術を受ける気になったんだよ。これからはトイレの掃除は週に1回にするね」

 

野垣クリニック 院長

2001年香川大学医学部卒業 
消化器外科医として10年働いたのちに家業である肛門外科医の道へ
2020年4月より野垣クリニック院長就任
明るい患者様やスタッフに囲まれて日々楽しく診療中

著者紹介

連載肛門科医師の奮闘の日々

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