「リフォーム」は差別化の要因にならない点に注意
家主さんから、リフォームとリノベーションの違いは何? と聞かれることがあります。筆者が考える、賃貸経営におけるリフォームには3つの視点があります。
その3つとは、
①修繕・修理
②リフォーム
③リノベーション
それぞれご説明していきますと、①の修理・修繕は、単純に壊れたものを修理する、汚くなったものを綺麗にするという意味で、破損・汚損を回復する、いわば原状回復のような感覚のリフォームです。前回お話したDECOリフォームは、修理修繕が必要なら少しデザインも考えましょうねというお話です。
次に、②のリフォームですが、賃貸経営におけるリフォームとは、〝古いものを今の形に更新する〟というふうに考えています。
例えばお風呂にシャワーがない場合、昔はそれでも良かったのですが、今はシャワーが必要だという事でシャワーをつける、和室を洋室にする、洗面台をシャンプードレッサーに変える、水しか出なかった部屋に給湯設備を新設する、などはリフォームに当たるということです。
ここで気をつけて頂きたいのは、このリフォームと言われるものは、賃貸経営で言うところの「差別化」要因にはならないということです。
例えば、和室を洋室にリフォームしたとします。家主さんからすれば、以前の和室からは劇的に変化したように感じる事でしょうが、元々和室だった部屋を、単に洋室にリフォームしたところで、今の入居者から見れば「当たり前の部屋」になっただけなのです。
そこを認識せずにリフォームをすると、賃貸経営で言うところの無駄金リフォームになりやすい種類の工事だと思います。
「リノベーション」は収益力の改善を目的とされる
最後③のリノベーションですが、一般的には、デザイン性の高いものでオシャレな空間にする事を連想されると思います。
しかし私が考える賃貸経営のリノベーションは、部屋そのもののデザインは2の次、3の次の話で、一番大事なのは、収益力の改善を目的にされるリフォームだと考えています。
収益力の改善というのは、わかりやすく申し上げると、今まで築30年和室2間の2DKトイレ和式・風呂シャワーなし、給湯設備もなし、家賃5万円で3年空きっぱなしのお部屋があったとします。このような部屋だと、入居してくれそうなターゲットは、高齢者世帯、シングルマザー、生活保護受給者などが対象となる可能性が高くなると思います。
そのようなお部屋をリノベーションするということは、先ほどの従来のターゲットを変えて、例えば、30代女性キャリアウーマンにしよう、とすることです。
ターゲットが明確になればリノベーションのコンセプトが決まっていきますから、それなら1LDKにして、キッチンは大きめのもの、癒されたいと感じている人が多いだろうからペットOKにしよう・・・様々なコンセプトが出てきます。
そして、この地域に住みたいと思うような女性はいくらぐらい家賃を出すだろうか? と考えて6.5万だとすれば、それで決まる部屋を作るわけです。
つまり、部屋のデザインやリノベーションではなくて、収益構造のリノベーションを行う事が一番大事なことです。
そして、そこから逆算して、それに見合ったコストでリノベーションできれば、空室の度に施工をしていき、いつしかマンション全体の入居者層も変化し、収益力も変化していくことによって収益力、ひいては資産価値アップのリノベーションが可能となるわけです。
次回は、事例でもう少し具体的に見ていきましょう。