(※画像はイメージです/PIXTA)

開業医を目指す手段のひとつに、クリニック経営から引退する院長にお金を支払って跡を継ぐ「承継開業」という方法があります。すでに人材も設備も整い、患者もついているため、あとは新院長が頑張るだけ…と思いきや、現実はそう簡単ではないようです。自身もクリニックを経営する医師でありながら、経営戦略ビジネスも展開する蓮池林太郎氏が、実例をもとに解説します。

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承継したクリニックの古参スタッフと折り合えず…

ある医師の話です。某クリニックの院長が高齢となり、跡継ぎもいないため、スタッフも同条件で雇用を続けることを条件に継承開業しました。前院長の人柄に問題があったわけではないのですが、とにかく事務と看護師の能力が低く、患者さんへの態度も悪く、継承した新院長は頭を抱えていました。

 

新院長が就任し、いままでよりも患者さんが増えて忙しくなり、前院長よりも指導も厳しくなったのかもしれませんが、10年以上勤めているスタッフも長年の習慣を変えるのは難しく、新しいやり方に反発があったようです。

 

しまいには、ベテランの看護師が採血する常連の患者さんに「院長が変わって働きにくくなった」「新しい院長は診察の見立てが悪い」などと漏らすようになり、次第に新院長と険悪な関係性になっていきました。

 

新院長としても、正社員として看護師を雇用していることもあって解雇するわけにはいかず、また看護師のほうも、長年の勤務で定期昇給しており給料がよく、ほかのクリニックへの転職でいまの給料を上回るのは難しいため、お互い我慢くらべのような状態になってしまいました。

 

クリニック内にもその雰囲気が蔓延し、しびれを切らした新院長が看護師に辞めてほしいと切り出して、6ヵ月分の給与を上乗せして支払うことで解決したそうです。

 

もちろん、継承開業だからといって必ずこのようなトラブルが起きるわけではないでしょうが、可能であれば、スタッフを同条件で雇用継続するのは止めたほうがいいかもしれません。

カリスマ院長のクリニックを承継、患者から酷評の嵐

大盛業しているマイナー科のクリニックのケースです。院長が高齢となり、引退のため事業承継をすることにしました。

 

カリスマ性のある院長で、遠方からも患者さんが訪れるクリニックでした。継承開業を仲介する会社から、筆者のところにも継承の話がきました。

 

推測ですが、年間の売上は3億円以上あったのではないでしょうか。科目や地域にもよりますが、利益の1~3年分などで取引されることもあるため、億単位の金額で継承されたと思われます。

 

さて、無事に継承する医師が見つかり、同じ場所でクリニック名を変えて診療を開始しました。最初は患者さんが大きく減ることはありませんでしたが、次第に減少が目立ちはじめ、1年後には半分ほどにまでになってしまいました。

 

当然、新院長はカリスマ性のある前院長の処方を継続して努力していました。同じマイナー科目の専門医でもあり、腕も悪いわけではないでしょうが、前院長のカリスマ性までは引き継げなかったということでしょうか。

 

Googleの口コミも「いままで治っていたのに新しい先生では治らなくなった」「前院長のときはよかったが、院長が変わって行くのを止めた」など、よくない口コミが目立つようになりました。

 

いままでの患者さんはクリニックへの期待が高いからこそ、遠方から来院されているわけですから、普通の診療では満足しにくいということでしょう。

 

継承開業の場合、どのような患者さんが来院されていて、継承したらどれくらい患者さんが継続して来院してもらえるのか、計算をしたほうがよさそうです。

 

患者数や継承費用が同じであれば、評判がいいクリニックより評判が悪いクリニックのほうが、むしろ伸びしろがあり価値があるという考え方もあります。

 

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