(※画像はイメージです/PIXTA)

開業医を目指す手段のひとつに、クリニック経営から引退する院長にお金を支払って跡を継ぐ「承継開業」という方法があります。すでに人材も設備も整い、患者もついているため、あとは新院長が頑張るだけ…と思いきや、現実はそう簡単ではないようです。自身もクリニックを経営する医師でありながら、経営戦略ビジネスも展開する蓮池林太郎氏が、実例をもとに解説します。

事業承継後、引退したはずの院長が競合の外来に…!

東京都内において院長が高齢のため引退して閉院するクリニックがあり、新院長が継承することになりました。

 

引き継ぎも兼ねて新院長が一緒に勤務することになったのですが、なんと徒歩3分ほどの近隣の競合するクリニックで、引退するはずの院長が外来診療を行うことが判明しました。

 

競合クリニックからは「患者さんも連れてきてほしい」といわれ、「移転することになった」と患者さんにパンフレットを渡していたようです。かなり前から案内していたそうです。

 

実はこちら、筆者の事例です。開業医生活への期待に胸を膨らませていましたが、そのことを知ったときには大変な衝撃を受けました。

 

引退する予定だった高齢の医師に対しては、将来得られる患者さんを奪われてしまう絶望感でいっぱいになりましたし、ついでに医療事務スタッフには、「なんでこんな大事なことを伝えてくれなかったんだ!」と、不信感まで持ってしまいました。

 

まあ、いま思い返せばよくあることなのかもしれませんが、若かった私にとっては、開業前からの大きな試練となりました。

 

1日平均40人ほど来院があった皮膚科でしたが、結局、かかりつけの半分の20人ほどは競合クリニックに通うようになってしまいました。開院当初1年で、予定よりも1000万円以上も損をしてしまった計算になります。いまではほろ苦い思い出になりましたが、開業していると、思いもよらないことが起きるものです。

 

 

蓮池 林太郎
新宿駅前クリニック 院長

 

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