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設備が整っていても、立地が悪ければ集患は厳しい
筆者の知人が開業している眼科クリニックのケースです。
そのクリニックは、東京都内の複数路線が乗り入れる住宅街にあり、最寄り駅から徒歩3分ほどの場所にありました。しかし、そこから10分ほどの場所に、手術設備のある大型の眼科が開業しました。
競合が開院する前、知人は新規患者さんが3~4割ほど激減するのではないかと大変心配していました。
ところが実際は、新しく開業した眼科には患者さんがなかなか集まらず、知人の眼科のほうは1割ほどの減少ですみました。
手術設備も検査機器も充実しており、評判も決して悪くない眼科なのにもかかわらず、なぜ患者さんは集まらなかったのでしょうか?
その理由は「立地の悪さ」です。近隣にスーパー等の大型商業施設があるわけでもない、徒歩10分超の住宅街になると、クリニックの前を通りがかるのは近隣住民がほとんどです。
また、地域住民の移動手段は電車がメインであるため、車で通りがかる人もあまりいません。
そうなると、ネットで眼科を探している人であっても利便性の高い駅近くのクリニックを選びがちですし、クリニックの存在を知ってもらえるのは周辺住民のみですから、患者さんが集まらないのは当然といえば当然です。
「不便な場所」を選んでしまう、典型的な理由とは
不動産の専門家でなくても、少し考えれば開業場所として適さないことに気づくのではと思いますが、しかし、なぜその場所で開業してしまったのでしょう。コンサルタントに騙されたのでしょうか、それともなにか特別な事情があったのでしょうか…?
筆者は開業支援を行ってきた経験から、開業する医師の「ある程度までに家賃を抑えたい」という予算感を優先した結果だと推測します。
手術設備のある眼科を開業する場合、50坪以上のスペースが必要です。しかし、開業する医師の心理としては、手術設備や内装の費用がかなり高額になるため、できるだけ家賃、初期投資の保証金を少なくしたいと考えています。
手術設備のない眼科が、1坪2万円の家賃で25坪を借りると、合計50万円ですが、手術施設のある眼科が同じくらいの家賃で50坪借りようと思えば、坪1万円以下の場所を探さねばなりません。もし最寄り駅が同じであると想定すると、駅近くが1坪2万円なら、坪1万円の場所は、駅からかなり離れなければなりません。
適正な家賃は「月間売上の10%前後まで」といわれています。月間売上を500万円ほどと想定しているなら50万円ですが、手術などを行い1000万円の売上を見込むなら100万円、2000万円なら200万円でもおかしくないという計算になります。
必ずしも売上と家賃は比例する必要はないのでしょうが、仮に1坪2万円×25坪=合計50万円で開業している、手術をしない眼科があるなら、手術をしている眼科は、より多くの患者さんを集める必要があるため、1坪2万円以上の、より好立地な場所に開業するべきという考えもあります。
1000万円の売上なら、1坪1万円×50坪=合計50万円ではなく、1坪2万円×50坪=合計100万円、1坪2万5000円×50坪=合計125万円でも妥当かもしれません。実際には手術の利益率はそこまで高くないので、適正な家賃が異なる可能性はありますが、より多くの手術患者さんを集めるためにも、好立地であることは必要でしょう。
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