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医療モールのはずが、隣は美容院や保育園に…!
医療モールの計画があったとしても、必ずしも各科のクリニックですべての募集区画が埋まるとは限りません。
好立地で家賃が適正なら、すぐに入居希望の医師が集まりますが、立地が悪かったり家賃が高すぎたりすると、希望者が集まらないこともよくあります。なかには、筆者の目から見ても計画自体が無理筋で、仮にクリニックで区画が埋まったとしても、あまり患者さんが集まらないだろうなと思われる物件もあります。
東京都23区内のある住宅街の医療モールでは、内科、小児科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、皮膚科等、6科目ほどが入る予定でした。筆者の知人は医療モールができるなら安心と、早めに申し込んだところ、実際に開業したのは内科と知人のマイナー科目の2つだけでした。
ほかのスペースには美容室や保育園、学習塾等が入り、知人は「話が違う」と怒っていました。
契約する前に、他科目の契約状況を把握しておくことはとても大切です。医療モール担当者からも、商談中、申込みあり、もうすぐ契約予定等の話は出るでしょうが、「本当に契約したのか」をしっかり確認するべきでしょう。
医療モールを紹介してくれるコンサルタントや、医療モールの担当者にとっても、プラスの情報は伝えやすく、マイナスの情報は伝えにくいものです。当然ですが、コンサルタントはクリニックを誘致できたら、医療モールを企画している会社や医療モール内の調剤薬局から紹介料をもらえます。
地域によっては「この科目の需要はあるが、この科目の需要はない」といった事情があることも考えられるため、自分の専門科目の競合を綿密に調査するだけでなく、他科目のクリニックが集まりそうかどうかも含め、競争の激しさもチェックしておく必要があるのです。
他の開院状況はもちろん、企画会社の実績も調査を
一般的に医療モールは、駅の近く、幹線道路沿い、ショッピングセンター等にできるケースが多いのですが、規模の大きな駅では、医療モールが複数計画されていることも少なくありません。
実際に埼玉県内には、3年以内に5軒ほど医療モールが計画されている駅もありましたが、医療モールへの入居を検討している医師には、具体的な話はなにも知らされませんでした。筆者が調べてお知らせしたところ驚いていましたが、将来的に競合が増える可能性が高いわけですから、自分でもしっかりと情報収集することが大切です。
医療モールを作れそうな土地があると、医療モールを企画する会社や調剤薬局が、医療モールの計画を検討します。採算が見込める場所であるほど、より高額で土地を入札・建物のオーナーに高額な家賃で交渉することになります。
ちなみに、安心感があるのは実績のある大手の調剤薬局です。なかには、大手調剤薬局が採算が合わないと判断した立地にもかかわらず、医療モールを手がけたことがない調剤薬局が挑戦するケースもあります。
空中階の医療モール、認知度が上がらず集患に苦戦
ある医師が開業したのは、住宅街そばで、それなりに人通りのある商店街から一歩入ったビルの医療モールでした。しかし、空中階だったため商店街から見えにくく、地域住民からなかなか認知されませんでした。初日の新規患者は、近隣にまいたチラシで内科を知った3人ほどで、通りがかりによる来院はほとんどありませんでした。
筆者はその医師からネット集患についての相談を受け、対策を打ちました。幸い、ある程度の規模がある駅で、ネット検索で内科を探している人も少なくなかったため、ネット集患の効果が見込める立地でした。
まず検索連動型広告を打ったところ、すぐに1日数人の新規患者が訪れるようになりました。そして、Google検索の「地域名+科目名」で上位表示されるように施策を行うと、徐々にではありますが、患者が増えてきました。
この医療モールは駅から5分以内の距離ですが、通りかかる人が少ない目立たないビルであるため、医療モールには適さない立地だといえるでしょう。医療モール内の他科目のクリニックは、ネットに力を入れていないこともあり、苦戦しているようです。
そこまで規模の大きくない駅の医療モールは、駅改札を出たらすぐに見えるレベルでないと厳しいケースもあります。
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