(※画像はイメージです/PIXTA)

民間信用調査機関、帝国データバンクの調べによると、2020年度の自転車販売市場(事業者売上高ベース)は2100億円を超え、過去最高を更新しました。新型コロナウイルス禍が拡大、長期化する中で感染リスクの低いパーソナルな移動手段として見直されたことが増収を後押ししたと同調査は見ています。なかでも医療従事者に愛好家の多いロードバイクは販売台数を大幅に増やしています。医療従事者のうちでも、循環器系の関係者が好むのはなぜか。愛好家を訪ねました。

【ケース1】自分のペースで楽しめる

総合病院に勤務する50代半ばの心臓血管外科医A氏がロードバイクに乗り始めたのは40歳の時。運動不足解消と健康維持を図るのがきっかけでした。仕事柄不規則な生活続きで運動不足を気にかけていたA氏は30代後半からゴルフを始めます。

 

「しかし、決まってゴルフの前日に緊急手術で呼び出されるのです。一緒に回る予定のメンバーにも迷惑がかかる。そんなことが数回続いて、ゴルフは潔く諦めました。その点、ロードバイクは日時に縛られず、自分のペースで楽しめるので、好都合だと思ったのです」。A氏はロードバイクとの出合いをそう振り返ります。

 

ロードバイクは理想的な有酸素運動と言われています。「心臓リハビリの理論から見ても理に適っています。運動療法的な側面もあるし、心肺機能を向上させる効果もあります」とA氏は専門的な立場から、ロードバイクの利点を説きます。まさに、循環器系の医療従事者ならではのアプローチでしょう。

走行中に思い付いた画期的な術式

よく知られるように、有酸素運動は軽~中程度の負荷を継続的にかけ、酸素を使って体内の脂肪を燃焼させる運動です。その効果は脂肪燃焼ばかりでなく、脳内活性化にも役立つと考えられています。

 

古来、良い考えは「三上」で生まれるとされています。もともとは古代中国の考え方で、三上とは「馬上、枕上、厠上」を指します。移動中、就寝中、用足し中など、リラックスしたときに妙案が浮かぶという例えです。現代風に訳せば「クルマ、ベッド、トイレ」といえるでしょう。クルマ=乗り物=ロードバイクとみなせば、ロードバイクもよい考えを生む一種の環境に違いありません。

 

「忘れもしない、10年前のゴールデンウイーク中、ペダルをこいでいた時に以前から考えていて、どうしてもまとまらなかった画期的な術式を思い付いたのです。気分が爽快になった時のふとしたひらめきです。帰ってからただちに実証試験に取りかかり、新たな術式として完成させました」。有酸素運動による脳内活性化がもたらした効果でしょう。

経験者のアドバイスに耳を傾けよ

「こんなにスピードが出るんだ、というのが初めてペダルをこいだ時の感想です」。A氏を驚かせたのは軽々と時速40キロに達するロードバイクの性能でした。運転席の周りが覆われている車と、風を切りながら走るロードバイクとでは同じ時速40キロでも体感が違います。

 

前述の車種区分で定められているように、ロードバイクは舗装路を高速で走ることに狙いを定めています。参考までに、同区分ではマウンテンバイクは「荒野、山岳地帯等での乗用に対応した構造のもの」、クロスバイクは「マウンテンバイクとロードレーサーを組み合わせ、一般道路での走行に適するようにしたもの」としています。

 

初めてペダルをこいだ時のA氏の感想はそのまま、初心者へのアドバイスになります。「スピードが出るということは転倒事故を起こしやすいということです。ですから、危険な街中では乗らないほうが賢明。できるだけ、河川敷などの専用コースか自然に恵まれた郊外を走るようにするべきです。最初にどんな自転車を買うべきか、どのようにパーツを組み合わせるかも含めて、まずは経験者の助言に耳を傾けることが大切です」

 

面白さが分かると道具に凝るのはどんな趣味も同じ。A氏も一時はロードバイク3台、マウンテンバイク2台を保有していました。ロードバイクは通勤用、トレーニング用、競技大会用と乗り分け、国内のヒルクライムレースにも積極的に参加しています。

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