「命を育む大変さを、男性にも知ってほしい」と語る山下真理子氏

いつまで続くのか分からず、「出口の見えないトンネルのなかにいるよう」とも言われる不妊治療。女医の山下真理子氏も、そんな不妊治療で子供を授かったひとりだという。どのような問題に直面し、どう向き合ってきたのか、医師の立場から語ってもらう本連載。第8回目は、第二子を授かるために再度赴任治療に踏み切った経緯と、その現実を原稿にしたためてもらった。

第二子の不妊治療、待合室での視線

おそらく、「そこまでして」と思う人もいるだろう。中には、「元気で健康な男の子を授かったんだから、欲張るな」と思う人もいるだろう。

 

二人目不妊で悩む人は、皆、そんな批判を浴びながら、治療に通う。

 

「子供もまだ1歳にもならないのに」

 

「今は別のことを頑張るべきでは」

 

そんな風にも言われた。

 

不妊治療の受診は、数日前(場合によっては前日)に初めて予定が決まることも多いため、預け先がなく、NOAHを連れて受診する日もある。

 

そんな日は、なんとなく待合室での視線が痛く感じる。小さい乳児を連れて受診しているママは、どこか後ろめたいような気持ちで、待合室の隅に座る。時々、NOAHに笑いかけてくれる人がいると、すごく嬉しくなる。

羨ましくて、時には妬ましくて

けれど、私もつい一年半ほど前までは「そちら側」だった。先の見えない不妊治療を続けて、いつ妊娠するかわからなかったあの時、「二人目不妊」で受診しているママさんを見て、心から笑顔を向けてあげられたかというと、自信がない。羨ましくて、時には妬ましくて、嫉妬心を感じる自分が嫌だった。

 

子供が全てではないと思う。一人っ子の方が、じっくり向き合って、お金も時間も存分にかけてあげられると思う。今のところ「一人っ子」の息子NOAHは、ママが大好きなママっ子で、抱っこが大好き。寝る時もご飯もお風呂も、ママには抱っこをせがんで甘えてくる。泣いていたらすぐに飛んでいくし、手を伸ばされれば抱っこするし、どこに行くにも一緒に出かけられる。

 

二人目がいたら、今のようにはできないし、我慢させることも出てくるだろう。今よりもっと、自分の時間はなくなるだろう。

産後最初の採卵をするも卵子は自死

この原稿を書いている今日、二人目の「卵」を採卵した。同じくらいの年齢の人であれば数個以上は取れるはずの卵だが、今回も、たった一つだけ、卵が採取できた。けれども、無事に受精するかどうかは明日にならないとわからない。

 

既に一度、出産後に行った採卵では、精子と受精することなく、卵は自死してしまった。残存卵胞数が少なく、もうすぐ36歳になる私は、妊娠出産に遅すぎることはないけれど決して若くはない。

 

不妊治療を始めたのは31歳。気がついたら5年が経っていた。

次ページけれども不妊治療は続く

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