「親がたまたま持っている土地」に開業するのはダメ
筆者は、開業志望の医師に「親がたまたま所有していた土地や建物に開業するのは、やめたほうがいいです」とお伝えてしています。
昔よりは減りましたが、先祖代々の土地がある、両親の持っている建物がある等の理由で、自宅兼クリニックで開業するケースもあります。
そのような場所に開業しないほうがいい理由は、なにより「土地や建物がクリニックの開業場所に適している確率が極めて低い」からです。
筆者の知人の医師は、親がたまたま所有していた駅から徒歩10分超の土地にマイナー科目のクリニックをオープンしました。周囲にコンビニすらない住宅街の一角で、クリニックの前はあまり人通りがありません。
通りがかりで患者数が見込めないこともあり、ホームページを充実させたり、インターネット広告も出したりしましたが、あまり集患には結びつきませんでした。
マイナー科目で専門性の高い治療も行っているため、遠方からの来院があってもおかしくないのですが、電車で来院するにも駅から遠く、高齢者であればタクシーが必要なので、患者さんからなかなか選ばれません。
結局患者さんが集まらず、残念なことに勤務医時代の給与を下回る状況が続いてます。こんなはずじゃなかったのに…と嘆いていましたが、駅近くに移転しようにも、クリニックを建てた際の大きな借金もあるので、難しい状況のようです。
立地の選定ミスで、将来の収益に「億単位」の開きが…
「立地が悪いため、通りがかりの新規患者さんが1日2人少なくなってしまった」というケースを想定し、どれくらい業績が悪化するのかシミュレーションしてみましょう。
1人の単価が5000円として、合計4回通院するとなると、合計2万円、2人で1日4万円です。年間250日診療したとすると、合計1000万円。30年間開業しているとすると、3億円の計算になります。立地を間違えてしまったら、将来得られるであろう利益を億単位で損していることになります。
開業してから後悔しても取り返しがつきませんので、とくに激戦区での開業や初期投資の大きな開業をする場合には、立地についてよく勉強し、時間をかけて「適した場所」を探すことが重要になります。
蓮池 林太郎
新宿駅前クリニック 院長
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