米9月雇用統計、テーパリングの方針は維持の公算 (※写真はイメージです/PIXTA)

米9月の雇用統計が公表された10月8日の市場では非農業部門の就業者数が市場予想を下回るも、米国債利回りが全般に上昇(価格は下落)しました。米連邦準備制度理事会(FRB)が11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で債券購入政策の縮小(テーパリング)を通知、12月に開始するという市場予想に影響は与えなかったと見られます。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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米9月雇用統計:非農業部門就業者数は市場予想を下回るが、他の指標は回復を示唆

米労働省が2021年10月8日に発表した9月の雇用統計で、非農業部門の就業者数は前月比19.4万人増と、市場予想の49万人増を下回り、改定された8月の36.6万人増(速報値23.5万人増から上方修正)を下回りました。内訳では9月は宿泊など娯楽・接客業の就業者数が前月比で7.4万人増であった一方、政府部門はマイナス12.3万人と大幅なマイナスとなりました(図表1参照)。

 

月次、期間:2021年8月(左)~2021年9月(右)、前月比、太字は9月 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]米国の非農業部門就業者数の主な部門の変化 月次、期間:2021年8月(左)~2021年9月(右)、前月比、太字は9月
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

家計調査に基づく失業率は4.8%と、市場予想の5.1%、前月の5.2%を下回りました。なお、労働参加率が61.6%と市場予想の61.8%、前月の61.7%を下回りました。

 

9月の平均時給は前月比0.6%増と、4月以来の大きな伸びで、企業がより高い賃金を提示して労働者の確保に努めている状況が浮き彫りとなりました。

どこに注目すべきか:米9月雇用統計、失業率、就業率、賃金

米9月の雇用統計が公表された10月8日の市場では非農業部門の就業者数が市場予想を下回るも、米国債利回りが全般に上昇(価格は下落)しました。米連邦準備制度理事会(FRB)が11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で債券購入政策の縮小(テーパリング)を通知、12月に開始するという市場予想に影響は与えなかったと見られます。

 

非農業部門の就業者数が市場予想を大幅に下回るもテーパリングの方針に変更が無いと見る理由は就業者数のデータの見方に関係がありそうです。まず、前月比では伸びが低調でしたが前月分と7月分で約17万人と過去のパターンより大幅な上方修正となっています。また、米労働省は声明で年初から月平均56.1万人の増加であることを指摘、均して見れば堅調なペースと見られそうです。

 

次に部門別に就業者数を見ると(図表1参照)押し下げ要因は政府部門ですが、これは州及び地方政府の教育サービス部門における雇用の減少が背景で、学校再開の遅れという面と、当レポートで再三述べてきたテクニカル要因(季節調整)による面があると見ています。むしろ、小売を含んだ流通や、製造業などは堅調とも見られます。

 

次に、非農業部門の就業者数以外の要因を見るとテーパリング開始の方針を支持する要因が多く見られます。

 

例えば、9月の失業率は4.8%と、FOMCで示された長期失業見通し(4.0%)の達成が視野に入り始める水準です。もっとも、今回の失業率低下の一部は労働参加率が61.6%と低下したことも反映している分は割り引く必要があります(図表2参照)。

 

月次、期間:2017年9月~2021年9月、求人件数は7月迄 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米労働参加率、就業率と求人件数の推移 月次、期間:2017年9月~2021年9月、求人件数は7月迄
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

ただ、労働参加率は長期的に低下傾向で、足元ではリッチモンド連銀のバーキン総裁のように就業率が注目されています。9月の就業率は58.7%と、テーパリングの目処としていた59%にさらに近づきました。

 

また、別の雇用統計ですが求人件数(7月迄)は高水準で、働き口は多いと見られます。雇用のミスマッチの解消は求められますが、雇用環境は悪くはないと思われます。

 

最後に所得環境を見ると改善が進み、テーパリングを遅らせる要因は少ないように思われます。例えば、週平均労働時間は34.8時間と上昇に転じました。また、時間当たり賃金は同前月比0.6%増と市場予想の0.4%増を上回りました。賃金上昇への懸念はあります。ただ、前月が下方修正されている点は割り引く必要があります。また、労働者不足への対応による賃上げなのか、インフレ対応によるスパイラル的な賃金上昇かを見分けることは、インフレ動向を判断する上で今後より一層重要になると考えています。

 

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米9月雇用統計、テーパリングの方針は維持の公算』を参照)。

 

(2021年10月11日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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