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「構想の貧しさ」は「行為の貧しさ」に
■「大きな北欧型社会民主主義国家」を目指せ
では、どのような国家・社会モデルが目指すべき姿として描けるのでしょうか? それをここで拙速に論じることは避けたいと思いますが、これまで述べてきたイニシアチブとも併せて「小さなアメリカ」のアナロジーを踏襲して大きな方向性だけを示せば、それは「大きな北欧型社会民主主義国家」ということになると思います。
いたずらに経済成長だけを求めるよりも、格差を是正し、自然・芸術・文化に誰もがアクセスでき、本質的な意味でより豊かで瑞々しい生活を皆が送れる社会のイメージです……が、それはあくまで私個人の意見であり、最終的には社会全体の対話を通じて決定されるべきものでしょう。
なぜ私がここまで「社会の構想」にこだわるかというと、「構想の貧しさ」はそのまま「行為の貧しさ」につながるからです。
それを端的に示してくれる例の一つが1970年に開催された大阪万博です。この万博においてデモンストレーションとして提案されたテクノロジーのいくつかが実際にその後、社会に実装されたことは知られています。
よく挙げられるのはコードレス電話、温水洗浄便座、動く歩道、モノレールなどですが、開催テーマが「人類の進歩と調和」という壮大なものであった割には、率直に言って「このテーマでこれ?」という印象を拭えません。温水洗浄便座は確かに便利で快適ですが、これをもって「人類の進歩」といわれても、なかなか微妙なものがあります。
一方で「実現されなかったもの」をあらためて並べてみると、その構想力の貧しさに滑稽を通り越した一種の戦慄を覚えます。たとえば万博一の名物として当時大変な話題になった「人間洗濯機」などはその一例といえるでしょう(写真)。

人が頭を出した状態で直径2メートルほどのカプセルに入ると、超音波で発生させた気泡で体を洗い、前後のノズルから温水シャワーが出て、最後には温風を吹き付け乾燥までを全自動でやってくれる、という装置です。
いまから振り返ればタチの悪いジョークとしか言いようのないものですが、万博に向けた展示品の企画検討をする際、三洋電機創業者で当時は会長職の立場にあった井植歳男氏が「自分を洗う洗濯機を作ったらきっとウケる」と提案したのが発端となり、実現されてしまったようです。
驚くべきなのは、この人間洗濯機が単なる万博のデモンストレーションだけでは終わらず、実際に売り出されたということです。その価格はなんと800万円……当時の大卒初任給が3.7万円ほどだったので現在の価格に換算すると4000万~5000万円ほどになるでしょうか。当時の関係者はいったい何を考えていたのでしょう。