再び年初来安値に迫る
2万7,500円台で推移
■日本株式市場は今週に入り、下落基調に一段と拍車がかかっています。日経平均株価は5日の午前10時時点で2万8,000円を割り込み2万7,500円台で推移しています。日本株式市場は8月までの下落を受けて割安感がある中、ジャクソンホール会議で米国のハト派的な金融政策を確認し、日本の新首相誕生に対する期待で大きく上昇しました。しかし、日経平均株価は再び、年初来安値(8月20日、2万7,013円)をうかがう展開となりました。
期待形成要因に変化
ワクチン接種率は米国に並ぶ
■日本株下落の背景は、米国の物価と長期金利の上昇、米国の債務上限問題に加え、中国で不良債権問題及び電力規制といった製造ラインに深刻な影響が懸念される事案が重なったことです。国内では自民党総裁選で岸田氏が勝利し、日本の改革期待が後退しました。こうした内外要因から、海外投資家の売りを誘うような展開になったと考えられます。
■この間、ワクチンの接種率は加速し、9月30日には2回接種ベースで16歳以上の人口比で69%に達しました。米国は同68%ですので、接種率ではわずかに米国を上回りました。これまでであれば、ワクチン接種率の向上は、新規感染者数の抑制と相まって、市場のセンチメントを改善する要因とみなされましたが、今回は明らかに期待形成の要因が変化したと言えます。
米国市場の動向と日本企業の対中戦略に注目
■当面は、①米国の物価と債券・株式市場、②中国の電力規制を見極める必要があります。米国が安定すれば、経済の正常化に軸足のある期待形成が見込まれ、日本株式市場にはプラスとなります。一方、中国の電力規制は、電力が非効率的な産業(石油、化学、鉄鋼、非鉄、ガラス等)に重点的に行い、効率的な産業(自動車、IT、家電等)には優先的に電力を供給する方針を明確にしています。短期的には、我が国の産業への影響が懸念されるため、10月下旬以降の企業決算と、企業の今後の対中戦略が重要なカギとなりそうです。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『翻弄される日本株式市場』を参照)。
(2021年10月5日)
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