社長が変わらない限り、倒産の道をたどる
私は実際に役員会議の様子を見たことがあるのですが、会議のほぼ9割は、社長が発言し続け、取り巻きのイエスマンはしきりにうなずいているだけでした。まったく会議の体をなしていません。社長のご機嫌取り合戦です。
さらにこの社長、 会社のことにいちいち口を出すわりに、 普段は外へ出ていることが多く、名刺には「○○理事」「○○協会会長」などご立派そうな肩書きがずらりと並んでいます。これらの会合に忙しくて、ほとんど会社に顔を出さず、現場のことには無頓着です。
社員たちに「全然会社にいないくせに、口だけはうるさい社長」と陰口を叩かれるのも無理はありません。
おまけに、売上は落ちていく一方というのに、お抱えの運転者がいるのですから、呆れたものです。支出を減らすならそういった削れるところから着手すべきなのに、社員のボーナスカットをまず決め込むのですから、社員の心は離れていくばかりでした。
私はこのワンマン社長にしきりに訴えてきました。「社長、独裁をやめて、もっと社員さんにとって働きやすい経営にシフトしてください」と。しかし社長は「絶対無理。私は、私がやりたいと思ったことを、社員にやってほしい」と譲りません。
「しかし、このままだと会社は潰れますよ」と忠告しても、「そんなことはない」の一点張り。そして決まって、過去の社長の成功話をひけらかすのです。それは社長にとってのたった一度の成功であり、私は耳にタコができるほど聞かされた話でした。背景にある100を優に超える失敗は都合よく忘れ去り、 1の成功体験に縛られ続け、「俺に従わないやつは辞めてよし」というような独裁経営を続けているのです。
私の助言は一切合切突っぱね返されてしまいます。もう社長は高齢で、後継者は当然育っていません。いずれ社長が引退したら、自分で判断して動くことのできないイエスマン経営陣だけではどうにもなりません。 遅かれ早かれ、 倒産の道をたどることは目に見えています。
■独裁を改めない限り長寿企業の仲間入りはできない
これまでの経験から、独裁者タイプ社長の共通点が見えてきました。
周りにイエスマンばかり置いて確固たる独裁経営を実現し、 社外活動ばかりに精を出し肩書きはご立派、会社の現場を把握していないのに口だけは達者、業績低迷中でもお抱え運転手がいるなど金遣いが荒く、過去の数少ない成功話ばかり大げさに披露します。
あなた自身が、あるいは、御社のトップが、以上のような点を一つでも満たしているのなら、独裁者タイプである可能性が高いです。その下で働いている社員は日々不満を募らせているはずです。
たとえ今は業績が良好だったとしても、 それは単に時代や市場が味方しているだけであり、長く続けていくだけの土台は構築できていません。会社の内側にある綻びを無視していたら、つまり社長の独裁を改善していなかったら、人離れは加速する一方で、短命企業の仲間入りを果たすことになります。
藤間 秋男
TOMAコンサルタンツグループ株式会社
代表取締役会長
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