参考:大阪高等裁判所令和元年8月21日決定 決定要旨
「しかし、B(筆者注:長男のこと)は、平成23年2月2日、D法律事務所のE弁護士に宛ててファクシミリにより送信した書面において、平成22年4月16日頃の暴行に関し、被相続人が「オマエが体調を壊すと会社の支障になる。だから妻の世話などするな。」と言ったことに激怒し、被相続人を殴り倒した旨記載しているのであって(甲3)、被相続人が殴りかかってきたため反撃した旨のBの上記陳述は信用することができない。
また、そのほかの暴行の理由についても、上記そごの点に、上記陳述書の記載内容にいずれも客観的な裏付けを欠くことなどを併せ考慮すれば、直ちには信用することができない。
のみならず、仮に、平成22年4月16日頃を除く各暴行についてBが陳述するような理由があり、被相続人の言動にBが立腹するような事情があったとしても、それに対し、当時60歳を優に超えていた被相続人に暴力を振るうことをもって対応することが許されないことはいうまでもないところであって、このように、Bが被相続人に対し、少なくとも3回にわたって暴行に及んだことは看過し得ないことと言わなければならない。
しかも、被相続人は、平成22年7月の暴行により鼻から出血するという傷害を負い、同年4月16日頃の暴行に至っては、その結果、被相続人において、全治約3週間を要する両側肋骨骨折、左外傷性気胸の傷害を負って、同月19日から同月23日まで入院治療を受けたのであり(甲1)、その結果も極めて重大である。これらによれば、Bの被相続人に対する上記各暴行は、社会通念上、厳しい非難に値するものと言うべきである。
以上によれば、Bの被相続人に対する一連の暴行は、民法892条所定の「虐待」又は「著しい非行」に当たり、社会通念上、Bから相続権を剥奪することとなったとしても、やむを得ないものと言うべきである。
したがって、Bを被相続人の推定相続人から廃除することが相当である。」
※本記事は、北村亮典氏監修のHP「相続・離婚法律相談」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。
北村 亮典
こすぎ法律事務所弁護士
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