※画像はイメージです/PIXTA

中小企業経営者ができるだけ良い条件で自社を売却するためには、事前の準備が重要です。情報収集の重要性、タイミングの見極め方、そして会社の価値を最大限に高める「磨き上げ」について、専門家がくわしく解説します。※本記事は『スモールM&A実務ハンドブック』(五十嵐次郎著、中央経済社)より抜粋・再編集したものです。

最大限良い条件で売却する「磨き上げ」という方法

Q できるだけ良い条件で売却したいと思うが、どのようにすればよいでしょうか?

 

A 企業オーナー(売り手)が、できるだけ良い条件で売却するための「磨き上げ」について見ていきます。「磨き上げ」は、会社の問題点を抽出し、経営改善を行い収益力を上げ、企業価値の高い魅力的な会社とすることです。売り手オーナーは、できるだけ良い条件で売却するため、会社を「磨き上げ」して準備することができます。

 

(1)「磨き上げ」とは

「磨き上げ」は、会社の企業価値そのものの価値を上げる活動であり、相応の準備期間が必要であるといえます。中小企業庁が作成した中小企業経営者向けパンフレットに、「磨き上げ」について、より具体的な説明があります。

 

①「会社を未来につなげる10年先の会社を考えよう」(中小企業庁、2017年3月)

②「事業引継ぎハンドブック」(中小企業庁、2017年4月)

 

では、「磨き上げ」は、経営の「見える化」を行い、目には見えない自社の強みを再認識したうえで、他社に負けない強みをもつ(競争力を強化する)こと、効率的な事業運営、組織体制を整備することをあげています。では、「磨き上げ」とは、売却前に企業価値を高める取組みのことをいい、より良い買い手候補が見つかり、譲渡価格が上がる可能性があるとしています。具体的な施策として、会社の強みを作ること、ガバナンス・内部統制を構築することをあげています。

 

(2)短期的対応と中長期的な対応

M&A取引に備えた「磨き上げ」について、以下で短期的な対応と中長期的な対応について考えます。短期的(1年以内)には、即効性があり効果的な施策を実施します。中長期的(3~5年後)には、中長期的な時間軸から、最も有効で抜本的な施策の実施も可能です。M&Aのためという観点だけではなく、会社そのものの企業価値を高める視点が必要です。「磨き上げ」の具体的な内容はいくつかあります(図表参照)。

 

 

なお、できるだけ良い条件で売却するために、その対応や作業に時間がかかってしまったり、あるいは事実に反するような主張(あるいは誇張)は得策ではありません。

 

買い手候補は、DD(買収監査)にて対象会社の表面的な金額のみならず、潜在的な価値も調査対象として、詳細な調査・精査を行います。対処療法的(テクニック的)な対応では企業価値評価はそう大きくは変わらず、譲渡価格も大幅に引き上がることは難しいものと考えます。

 

また、前述のとおり、買い手にとって魅力的な事業基盤の構築(「人気業種への転換」)も参考となります。前述「人気業種への転換」で記載のとおり、以下のような事業基盤の強化に取り組むことで、買い手に対しより高い評価を得ることが可能です。

 

●フロー型ビジネスからストック型ビジネスへの転換

●個人経営の事業によるノウハウ化・分散型事業構造における「強み」事業化

●市場縮小・低利益率の構造業種から「ニッチトップ」へ

 

 

五十嵐 次郎

ファイブ・アンド・ミライアソシエイツ株式会社

 

 

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五十嵐 次郎

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