オーナーとして、譲渡後も会社に関与したいが…
A3 売り手オーナーがM&A(譲渡)した後も、会社に関与することはできます。オーナー自身の希望を先方(買い手)に明示したうえで、先方の経営方針とすり合わせすることが重要です。
中小企業M&Aの「よくある誤解」の1つかと思いますが、「オーナーが会社をM&A(譲渡)してしまうと、譲渡した次の日から、オーナーはすることがなくなってしまうのか」という質問を受けることがありますが、そのようなことはありません。売り手オーナーのM&A(譲渡)後の関与の仕方ですが、概ね以下のような選択肢があります。
★譲渡後、速やかに退出する(1ヵ月程度)
★一定期間、顧客の引継ぎを実施した後、退出する(半年ないし1年)
★業務委託契約や顧問契約を継続し、必要な技術やノウハウを承継した後、退任する(1年超)
まず、売り手オーナーは、自身は何を希望するのか、どのような引継ぎや承継を希望するかを明確にしておくこと(またはイメージすること)が重要だと考えます。例えば、以下のとおりです。
★担当業務・目的:主要取引先引継ぎ、業界団体役職の引継ぎなど
★引継ぎ・承継する期間:1年
★肩書・役職・役割:「顧問」「相談役」など
★契約・雇用形態:業務委託契約
★給与・報酬:月〇万円
★勤務日数・時間・頻度:週1回程度
一方、買い手企業にとっても、売り手オーナーにどのような引継ぎや承継を求めるか、明確に売り手に伝達しておくことも重要です。これら売り手オーナーの希望と買い手企業との合意(話し合い)により、M&A(譲渡)後のオーナーの関与方法が決まります。
M&A市場は、一般に売り手市場です。そのような中、売り手は自社のM&A(譲渡)において自身の事業の理想的な退出の仕方をイメージし、それを買い手に伝え、理解を示してくれるかどうかを判断基準の1つとすることができます。特に中小企業は、オーナー社長個人の実力・知見・ノウハウ・ネットワークに依存するところが多く、買い手にとっても、それを適切に承継できるか、会社の価値に直結するところであり、その価値を棄損することなくいかにに承継するかが重要です。
特にスモールM&Aにおいては、社長・オーナー・実権者同士の友好的なM&Aが可能です。その引継ぎや退任の方法を、退出するオーナーの本音や心情面にも十分配慮しつつ、きめ細かく打ち合わせし、取り決めすることが重要です。
五十嵐 次郎
ファイブ・アンド・ミライアソシエイツ株式会社
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