※画像はイメージです/PIXTA

M&Aについてしばしば誤解されるのが「赤字や債務超過があると譲渡できない」ということです。しかし実際には、いくつかのポイントをクリアすれば十分可能だといえます。Q&A形式で、詳しく解説していきます。※本記事は『スモールM&A実務ハンドブック』(五十嵐次郎著、中央経済社)より抜粋・再編集したものです。

オーナーとして、譲渡後も会社に関与したいが…

Q3 M&A(譲渡)した後も、会社に関与することができますか? 私自身(オーナー)はどうなるのでしょうか?

 

A3 売り手オーナーがM&A(譲渡)した後も、会社に関与することはできます。オーナー自身の希望を先方(買い手)に明示したうえで、先方の経営方針とすり合わせすることが重要です。

 

中小企業M&Aの「よくある誤解」の1つかと思いますが、「オーナーが会社をM&A(譲渡)してしまうと、譲渡した次の日から、オーナーはすることがなくなってしまうのか」という質問を受けることがありますが、そのようなことはありません。売り手オーナーのM&A(譲渡)後の関与の仕方ですが、概ね以下のような選択肢があります。

 

★譲渡後、速やかに退出する(1ヵ月程度)

★一定期間、顧客の引継ぎを実施した後、退出する(半年ないし1年)

★業務委託契約や顧問契約を継続し、必要な技術やノウハウを承継した後、退任する(1年超)

 

まず、売り手オーナーは、自身は何を希望するのか、どのような引継ぎや承継を希望するかを明確にしておくこと(またはイメージすること)が重要だと考えます。例えば、以下のとおりです。

 

★担当業務・目的:主要取引先引継ぎ、業界団体役職の引継ぎなど

★引継ぎ・承継する期間:1年

★肩書・役職・役割:「顧問」「相談役」など

★契約・雇用形態:業務委託契約

★給与・報酬:月〇万円

★勤務日数・時間・頻度:週1回程度

 

一方、買い手企業にとっても、売り手オーナーにどのような引継ぎや承継を求めるか、明確に売り手に伝達しておくことも重要です。これら売り手オーナーの希望と買い手企業との合意(話し合い)により、M&A(譲渡)後のオーナーの関与方法が決まります。

 

M&A市場は、一般に売り手市場です。そのような中、売り手は自社のM&A(譲渡)において自身の事業の理想的な退出の仕方をイメージし、それを買い手に伝え、理解を示してくれるかどうかを判断基準の1つとすることができます。特に中小企業は、オーナー社長個人の実力・知見・ノウハウ・ネットワークに依存するところが多く、買い手にとっても、それを適切に承継できるか、会社の価値に直結するところであり、その価値を棄損することなくいかにに承継するかが重要です。

 

特にスモールM&Aにおいては、社長・オーナー・実権者同士の友好的なM&Aが可能です。その引継ぎや退任の方法を、退出するオーナーの本音や心情面にも十分配慮しつつ、きめ細かく打ち合わせし、取り決めすることが重要です。

 

 

五十嵐 次郎

ファイブ・アンド・ミライアソシエイツ株式会社

 

 

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スモールM&A実務ハンドブック

スモールM&A実務ハンドブック

五十嵐 次郎

中央経済社

事業承継やM&Aを必要とする中小企業や小規模事業経営者、それを後押しする税理をはじめとする士業、独立系コンサルタント、地域金融機関の方々に向けたスモールM&Aの入門実務書。

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