※画像はイメージです/PIXTA

中小企業や小規模事業者の事業承継の選択肢「スモールM&A」が注目を集めています。近年の着実な増加の理由として、経営者たちの意識の高さはもちろん、省庁による後押しも効果を発揮しているといえます。専門家がくわしく解説します。※本記事は『スモールM&A実務ハンドブック』(五十嵐次郎著、中央経済社)より抜粋・再編集したものです。

経産省・中小企業庁・商工会議所等も、支援に積極姿勢

経済産業省・中小企業庁は、ここ数年継続して、各種報告書に調査検討結果や実際の実例などを公表し、事業承継や第三者承継(M&A)について、その現状や課題、またその取組みの重要性を取り上げ、さまざまな取組みを支援しています。

 

特に、中小企業庁が毎年公表している中小企業白書において、中小企業の問題点として、人口減少を背景とした開業・廃業の停滞や人手不足をあげており、さらに事業承継に関し、若い世代への引継ぎが業績に与える好影響などを分析し、経営資源を引き継いでの起業の取組みに焦点を当て、事業承継には早期に備えが必要だとしています。

 

[中小企業白書(事業承継またはM&A関連記載)]

・中小企業白書(2016年版)(第5章第7節「事業承継支援」)

・中小企業白書(2017年版)(第2部第2章「事業の承継」)

・中小企業白書(2018年版)(第2部第6章「M&Aを中心とする事業再編・統合を通じた労働生産性の向上」)

・中小企業白書(2019年版)(第2部「経営者の世代交代」)

 

2018年版中小企業白書では、人手不足の現状を分析したうえで、中小企業の生産性向上に向けた取組みについて解説されており、業務プロセスの見直しなどのほか、M&Aを活用した事業再編についても取り上げられています。またその中で、事業承継を背景に中小企業のM&Aは増加傾向にあり、M&Aは買い手側の中小企業にとっても、相手先の企業との間でシナジーを発揮することで生産性を高める契機となっていることを解説しています。

 

2019年版中小企業白書、小規模企業白書においても、中小企業や小規模事業者の共通の課題として「経営者の世代交代」と「中小企業・小規模事業者に期待される自己変革」に焦点を当てています。

 

また、事業承継支援の一環として、事業引継ぎ支援センターが設置されています。事業引継ぎ支援センターは、2011年度より国(経済産業省)が産業競争力強化法に基づき、各都道府県に設けられた事業引継ぎ相談窓口である公的組織です。事業引継ぎ支援センターでは、後継者不在の中小企業・小規模事業者に対し第三者への承継(引継ぎ)を支援するため、事業引継ぎなどに関するさまざまな情報提供・助言、後継者不在の事業者と後継候補者のマッチング業務などを行っています。

 

最近では2019年12月に、経済産業省は後継者不在の中小企業に対して、第三者による事業承継を総合的に支援するため、今後10年間の集中的な取組みとして、「第三者承継支援総合パッケージ」を公表しました。この政策によって、官民の支援機関が一体となって、今後年間6万者、10年間で60万者の第三者承継の実現を目指す取組みを掲げています。

 

また、中小企業庁は「中小M&Aガイドライン」(中小企業庁財務課、2020年3月31日公表)を公表しています。中小企業庁は過去(5年前)にも「事業引継ぎガイドライン」を公表しましたが、それを全面改訂し当ガイドラインを策定して、中小企業のM&Aの課題を整理し、さらなる中小企業M&Aを促進しています。

 

次に、地域・地方の公的機関におけるスモールM&Aの取組み例についても見ていきます。

 

大阪商工会議所では、かねてより中小企業のM&A取引やスモールM&A取引に注力しています。1997年4月に公的機関では全国初のM&A市場を創設し、中小企業の友好的なM&Aを支援していました。2011年2月には、既存のM&A市場とは別に「スモールM&A市場」を創設し、さらに安価な料金で小規模なM&Aを支援しています。公的機関として、中小・小規模事業者の事業承継M&A支援に際し、「スモールM&A」を規定し、各種支援や取組みを行っているスモールM&Aの先駆的な存在といえます。

 

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五十嵐 次郎
ファイブ・アンド・ミライアソシエイツ株式会社

 

 

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五十嵐 次郎

中央経済社

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