「情報」は無料ではない、対等に交換すべきもの
のんびりと仕事をする人や企業が立ち遅れていくのは彼らの自由ですが、そこに巻き込まれるとこちらも時間を取られてしまいます。一緒に仕事をするとは、同じ時間を共有すること。ペースを揃えなければ相手の時間を奪うことになると考えるべきだと思います。
「睡眠の**について教えてください」
こうした頼みごとを気軽にしてくるのも日本企業で、私も最初は日本人の一人として喜んで協力していましたが、プロジェクトとして成立しないことがほとんどでした。単なる情報交換ならまだましで、こちらが情報を提供して終わりというパターンも増えてきました。
考えてみれば、営利目的で利益を出しているのが企業というものなのに、こちらに対して時間も情報も無料で提供しろというのは乱暴な話です。大学の研究者は浮世のことは考えず、ひたすら研究していると思っているのかもしれませんが、アメリカはそんな甘いところではありません。NIHの他に企業や個人からの投資を得て研究費を獲得し、ようやくラボを存続させているのですから、余裕はありません。
シリコンバレーでは、最初のミーティングで可能性が見えないと、次のミーティングはありません。その時点で縁が切れます。私もそれに倣い、一度目のミーティングが単なる表敬訪問だったり、一方的に情報を求めるだけのケースでは、次のアポはお断りするようにしています。情報のフリーライド(ただ乗り)をお断りすることは冷たいように思えるかもしれませんが、仕事の感覚が違ったりペースが遅かったりする人への対抗策にもなっています。
「スタンフォードの**の先生を紹介してください」
「シリコンバレーの**社のこの部門の方と会いたい」
こういう頼みごとについても同じことが言えます。表敬訪問だけして進展がなかったりすると、紹介した相手にも迷惑をかけてしまいます。
情報は対等に交換すべきものです。何か情報を得たいのなら、自分も差し出せる情報を持っていくこと。あるいはビジネスとして対価を支払うこと。
このごく当たり前のルールを守ることが、自分も相手も尊重する個人主義と言えるでしょう。米国の生活で身についた「give and take」は、日本の「持ちつ持たれつ」とは違って、「公平にやり取りする」という意味であると理解しています。
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