(※画像はイメージです/PIXTA)

中国では社会格差の是正を目指す「共同富裕」の実現に向けて、社会全体における富の再分配を主眼とした規制強化が相次いでいる。これをきっかけに、中国の代表的な株価指数であるMSCI中国株指数とCSI300指数のパフォーマンス格差が広がっている。その背景にあるのは、①業種別構成比率と、②中国A株とH株の価格差だ。

MSCI中国株指数とCSI300指数のパフォーマンス格差が拡大

中国では社会格差を是正させることを目標とする「共同富裕」の実現に向けて相次いで規制強化が打ち出されており、中国株式市場では改めて「チャイナ・リスク」が意識される展開となっている。しかし、中国株の代表的な株価指数であるMSCI中国株指数とCSI300指数の値動きを比較すると、今年5月ごろからMSCI中国株指数がCSI300指数に対して劣後し始めていることが分かる(図表1)。

 

日次、配当込み、円建て、2019年12月31日=100で指数化 期間:2019年12月31日~2021年9月24日 MSCI中国株指数:MSCI China Net Total Return(USD)を円換算 CSI300指数:CSI 300 Net Total Return(USD)を円換算 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表1]MSCI中国株指数とCSI300指数の推移 日次、配当込み、円建て、2019年12月31日=100で指数化
期間:2019年12月31日~2021年9月24日
MSCI中国株指数:MSCI China Net Total Return(USD)を円換算
CSI300指数:CSI 300 Net Total Return(USD)を円換算
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

なぜ、同じ中国株を対象とした株価指数にこのようなパフォーマンス格差が生じるのだろうか? その要因としては大きく分けて2つ挙げられる。

 

1つは業種別構成比率の違いだ(図表2)。外国人投資家がアクセス可能な中国A株、B株、 H株、レッドチップ、ADR(米国預託証券)などで構成されるMSCI中国株指数は、Alibaba GroupやMeituanなどの一般消費財・サービスや、Tencent HoldingsやBaiduなどのコミュニケーション・サービスの比率が高く、規制強化のターゲットとなっている急成長業種が多く含まれている。その一方、上海/深セン株式市場に上場する中国A株で構成されるCSI300指数は金融や生活必需品の比率が高く、どちらかと言えば「オールド・エコノミー」が中心だ。そのため、業種ごとの規制環境の違いが株価指数のパフォーマンスにも影響を及ぼしている。

 

単位:%、2021年8月末時点 出所:MSCI、ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表2]MSCI中国株指数とCSI300指数の業種別構成比率 単位:%、2021年8月末時点
出所:MSCI、ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

もう1つは中国A株とH株の価格差だ(図表3)。大手中国企業は中国本土市場(A株)と香港市場(H株)で株式を重複上場させるケースが多い。しかし、中国本土市場では中国国内の投資家が主な売買主体であるのに対し、香港市場では外国人投資家が主な売買主体だ。そのため、中国国内の投資家と外国人投資家における投資尺度の違いから、中国A株がH株に対してプレミアム(割高)で取引されることが常態化している。今回のように外国人投資家が「チャイナ・リスク」を回避する目的から保有するH株の売却を進めると、H株がA株に対してより大きく下落するため、結果的に中国A株のH株に対するプレミアムがさらに拡大することになる。これが株価指数のパフォーマンス格差につながった2つ目の要因だ。

 

日次、100=中国A株とH株の価格差が平均的に一致した水準 期間:2019年12月31日~2021年9月24日 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表3]ハンセン・ストック・コネクト中国AHプレミアム指数 日次、100=中国A株とH株の価格差が平均的に一致した水準
期間:2019年12月31日~2021年9月24日
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

それではCSI300指数は、「共同富裕」に端を発した「チャイナ・リスク」に対して耐性があると言えるのだろうか。中国の不動産開発大手の中国恒大集団は、巨額債務と中国当局による規制強化を受けてデフォルト(債務不履行)リスクが高まっている。もしデフォルトに陥り不動産業界全体にも悪影響が広がることになれば、中国の商業銀行では不良債権の増加や融資基準の厳格化等が発生し、ファンダメンタルズが悪化する可能性がある。そうなれば、金融セクターを多く含むCSI300指数といえども無傷ではいられないだろう。

 

 

※個別の銘柄・企業については、あくまでも参考であり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『「共同富裕」でパフォーマンス格差が広がる中国株式指数』を参照)。

 

(2021年9月27日)

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社 ストラテジスト

 

日本経済の行方、米国株式市場、新NISA、オルタナティブ投資…
圧倒的知識で各専門家が解説!カメハメハ倶楽部の資産運用セミナー

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【11/19開催】相続税申告後、
約1割の人が「税務調査」を経験?!
調査の実態と“申告漏れ”を
指摘されないためのポイント

 

【11/19開催】スモールビジネスの
オーナー経営者・リモートワーカー・
フリーランス向け「海外移住+海外法人」の
活用でできる「最強の節税術」

 

【11/23開催】ABBA案件の
成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト
「音楽著作権」へのパッション投資とは

 

【11/24開催】事業譲渡「失敗」の法則
―M&A仲介会社に任せてはいけない理由

 

【11/28開催】地主の方必見!
相続税の「払い過ぎ」を
回避する不動産の評価術

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録