※画像はイメージです/PIXTA

超高齢化社会とコロナショックが、不動産市場に与えている「大きな影響」について、不動産市況アナリストの幸田昌則氏が解説する。 ※本連載は、書籍『アフターコロナ時代の不動産の公式』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

「壊す時代」の不動産市場で「期待できる事業」

日本では、「建物の高齢化(老朽化)」も問題になっていくことは間違いない。築年数の古い住宅の取引件数が増加し続け、中古住宅市場は巨大に成長している。

 

最近の首都圏のマンション市場では、中古の取引件数が新築の販売戸数を上回ってきていて、欧米のように中古住宅が主流となる日も近い。

 

首都圏の中古マンションの成約物件と新規登録された物件のそれぞれの築年数は、年々延びている(不動産流通機構」データより)。

 

また、築年帯別の成約件数では、築31年以上の比率が上昇傾向である。これは首都圏の中古戸建て住宅についても同様で、成約物件の平均築年数は20年を超えている(「不動産流通機構」データより)。

 

2020年の7〜9月期の築年帯別の中古戸建て住宅の成約件数構成比を見ると、築31年以上の比率は23.7%となっている(「東日本不動産流通機構」データより)。

 

日本では、若年層、特に女性で「新築住宅」を希望する人は相変わらず多いものの、最近は、価格面から、さらにリフォーム技術の進展などで、従来の動きに変化が見られる。

 

これまで新築に押されてきたが、国の政策も中古住宅の流動化に力点を置くようになってきている。住宅・オフィス・店舗などは、リフォームコンバージョンによる再生事業が活発化し、市場が拡大方向にある。

 

また、空き家や空き店舗なども、利用目的の変更やリフォームなどで、再利用する例が各地で見られる。築100年を超える古民家が生き返る例も珍しくなくなり、事業化されている。今後は、どのように再生すれば「商品価値」が高まるのか、という視点が求められる。

 

これまで利用価値がないと放置されてきた老朽建物について、知恵と工夫で新しく市場価値を作り出す時代になっている。「既存の建物」の再生は時代の要請であり、大量の高齢化した建物は市場の将来を約束する「宝物」だ。

 

しかし、老朽建物には、再生が難しいものや、事業採算が合わないものもある。さらに隣地と合わせて開発したほうが事業として魅力的な場合には、「解体」した方が得策だという例が多い。

 

いずれにしろ、多くの老朽建物は解体の運命にある。建物の高齢化社会では、解体事業に大きな将来性が期待できる。「つくる時代」から「壊す時代」へと動き出している。

 

 

幸田 昌則

不動産市況アナリスト

 

 

アフターコロナ時代の不動産の公式

アフターコロナ時代の不動産の公式

幸田 昌則

日本経済新聞社

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