ロシアの金融政策動向を参考にする (※写真はイメージです/PIXTA)

資源国ロシアは、ブラジルなどと共に主要新興国の中では利上げを先行させてきた国です。ロシアが利上げを開始した背景は、景気回復ではなくインフレ率上昇の抑制を優先させた面が強いと見られます。一方、今回利上げを市場予想よりも低くとどめたのは将来のインフレ率上昇にある程度の目処が立てられたのかもしれません。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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ロシア中央銀行:利上げ姿勢は維持するも、市場予想を下回る上げ幅

ロシア中央銀行は2021年9月10日の金融政策会合で、政策金利(1週間物レポ金利)を0.25%引き上げ6.75%としました(図表1参照)。市場予想は過半が0.5%引き上げて7%とすることを見込んでおり、小幅な利上げとなりました。

 

 日次、期間:2020年9月13日~2021年9月13日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ロシアの政策金利とルーブル(対ドル)の推移日次、期間:2020年9月13日~2021年9月13日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

ロシア中銀は21年3月に利上げを開始し、今回の利上げを含め合計2.5%、政策金利を引き上げました。なお、ロシア中銀は声明で、状況が基本シナリオに沿って展開すれば、今後数回の会合のいずれかでの追加利上げの可能性を排除しないと引き続き引締め姿勢であることを表明しました。

どこに注目すべきか:新興国、ルーブル、期待インフレ率、PMI

資源国ロシアは、ブラジルなどと共に主要新興国の中では利上げを先行させてきた国です。ロシアが利上げを開始した背景は、景気回復ではなくインフレ率上昇の抑制を優先させた面が強いと見られます(図表2参照)。一方、今回利上げを市場予想よりも低くとどめたのは将来のインフレ率上昇にある程度の目処が立てられたのかもしれません。

 

月次、期間:2017年8月~2021年8月、前年同月比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ロシアの消費者物価指数(CPI、総合とコア)の推移 月次、期間:2017年8月~2021年8月、前年同月比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

ロシアに直接投資する人はまれでしょう。ただ利上げを先行させたロシアの動向は利上げを開始しはじめた他の新興国の動向を占ううえで参考となるかもしれません。そこで、ロシアのインフレ率と景気動向を振り返ります。

 

まず、インフレ率についてですが、9月9日に公表されたロシアの8月の消費者物価指数(CPI)は前年比6.7%と前月の6.5%を上回りました。また、コアインフレ率は同7.1%と、前月の6.8%を上回り、食料品等を除いた価格がより押し上げ要因であったと見られます。

 

足元のインフレ率の高さから、ロシア中銀はインフレ率への警戒姿勢を維持しています。しかしながら、一方で声明文には過度なインフレ懸念を緩和する方向であることもうかがえます。例えば、輸入品の価格上昇など必ずしも金融政策で対応できない面も含まれていることを示唆しています。なお、仮にルーブル安であれば金融政策も無関係とは言えませんが、ルーブルは安定的に推移しています。

 

次に期待インフレ率についても言及しています。足元のインフレ率が上昇すると、個人や企業の期待インフレ率は上昇する傾向があります。ロシアの期待インフレ率も上昇傾向を続けていましたが、足元では頭打ちも見られます。弊社でもロシアの期待インフレ率は頭打ちと認識しています。

 

そうした中、金融引締めの効果が期待されることもありロシアのインフレ率は年末に向け低下傾向に転ずると見込んでいます。ロシア中銀も同様の見方を示しています。

 

次に、ロシアのGDP(国内総生産)成長率を見ると、前年比ベースの成長率は4四半期続いたマイナス成長から脱却しましたが(図表3参照)、これは昨年の成長率低下の反動という面があります。

 

 四半期、期間:2017年4-6月期~2021年4-6月期、前年同期比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表3]ロシアの実質GDP(国内総生産)成長率の推移四半期、期間:2017年4-6月期~2021年4-6月期、前年同期比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

一方で、利上げの影響から先行性のある総合購買担当者景気指数(PMI)は8月分が景気拡大と縮小の目安である50を下回ったことから、景気への配慮もあった可能性があります。もっとも、インフレ率を目標(4%)に引き下げるため追加利上げを示唆するなど引締め姿勢は明確に維持していますが、徐々にトーンを和らげているようにも思われます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ロシアの金融政策動向を参考にする』を参照)。

 

(2021年9月14日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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