※画像はイメージです/PIXTA

不動産市況アナリストの幸田昌則氏は、「超高齢化社会が不動産市場を活性化させる」と語る。 ※本連載は、書籍『アフターコロナ時代の不動産の公式』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

「資産は最終的に女性へ」…持ち家はどうするか

高齢者のいる主世帯の8割以上が持ち家を所有している(総務省「2014年全国消費実態調査」〔負債を保有していない世帯を含む〕より)。

 

高齢者1人・2人世帯の多くは「広い家」に住んでいるが、今後の生活を考えると、広さより「生活の利便性」を求めるようになる。自宅を売却して、管理が容易な都心や駅近のマンションに移る流れが強まっている。

 

2018年の厚生労働省の調査によると、60歳以上の「外出の手段」は、大都市では徒歩、次いで自分で運転する自動車、さらに電車となっている(厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」より)。高年齢になると、「徒歩」の割合が高くなることが、駅近や都心への「住み替え」の需要が高まっていることを裏付ける。

 

若年層がより広い家を求める動きとは対照的に、高齢者層はコンパクトな住宅への動き、ダウンサイジングの動きが鮮明になっている。自動車市場でも、高齢者の大型自動車離れが進み、コンパクト・カーが売れている。

 

日本が長寿社会になればなるほど、健康維持と並んで老後の「生活資金」の確保が大きな問題として浮上してくる。自宅の「住み替え」も、単に老後に適した住まいを求めるのではない。住宅ローンの支払いを終えた戸建て住宅を4000万円で売却し、中古マンションを2500万円で購入すれば、手元に1500万円を確保できる。高齢者にとっては「一石二島」だ。

 

長寿社会となれば、相続対策よりも、充実した人生を送るための「生存対策」を考えなければならない。特に、最近では想定外の様々なリスクも多く、「緊急時の現金」の必要性が高まっている。地震・台風・浸水などの自然災害で、自宅を一瞬にして失くしてしまうことさえあるからだ。

 

平均寿命が延びたことで、退職後の「老後の期間」が長期化した。日本人の寿命はこの100年で約20年も延び、特に女性の長寿化は著しい(厚生省「昭和59年厚生白書」、香取照幸「教養としての社会保障」、「簡易生命表」より)。

 

著者も資産家の方たちを対象とした講演を数多くしているが、参加者の8割から9割が70歳以上の方で、年々、女性が増えている。資産は最終的には女性に移っていく時代となったのだ。

 

1920年代は「夫の引退」から死亡に至るまでの期間が短く、老後の生活を心配する必要はなかった。しかし、今後は「老後期間」はまだまだ延びていくことが想定され、この間の生活資金を確保しなければならない。90歳以上まで生きる人は珍しくなくなるため、所有不動産等の現金化は、今後、さらに強まっていくことは確実である。

次ページ有料老人ホームという「豊かな市場」
アフターコロナ時代の不動産の公式

アフターコロナ時代の不動産の公式

幸田 昌則

日本経済新聞社

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