当初の活用案は「普通のアパートの建築」だったが…
JR鶴見駅西口から道なりに坂を登っていくと、次第に住宅地に入っていきます。10分ほど歩いて、幹線道路から少し中に入ると、戸建て住宅やアパートの中にひと際目立つデザイナーズマンションが現れます。それが、ラグゼです。
正面のエントランスから見上げると6階建てのマンションに見えますが、実は道路から直接入る1階部分は地下1階の扱い。建築法規上は、地上5階、地下1階の建物です。建物の背後は斜面地で、左脇にはその斜面を登っていく階段が設けられています。
この土地に対する住宅メーカーの活用提案はアパートだったといいます。実際、隣地には土地所有者であるMさんの経営する2階建てのアパートが建っています。ごく普通に考えれば、立地条件や敷地条件から言って、この程度の規模の賃貸アパートを建てることになるのでしょう。
しかし筆者は、そうは考えませんでした。斜面地だからこそ、それをうまく利用し、もっと収益性の高い賃貸住宅を建てられると確信していました。
条件の悪さを「逆手に取り」土地活用を図る
この土地活用はもともと相続を意識したものです。Mさんが亡くなったとき、3人の兄妹にその遺産をどのように相続するか、考える必要が生じます。長男は既にご主人が亡くなったときに財産を分け与えられていたので、この段階で対象になるのは、長女・次女2人の姉妹です。この2人でうまく財産を分ける必要が生じます。
そのときは、相続した財産を長女と次女それぞれできれいに分けられるように、土地2カ所に賃貸住宅2棟を建設し、一方は長女に、他方は次女に分け与えることにしたのです。
私はその20年ほど前に姉妹の長女のご自宅の設計監理を担当した関係で、このプロジェクトに携わらせてもらいました。そこで考えたのは、土地の価値を顕在化させること。条件が悪そうに見えても、そこを逆手に取るなどして、土地の活用を図りました。
この話は次回に続きます。