中国、市場予想を上回った8月の貿易統計の今後 (※写真はイメージです/PIXTA)

8月の中国の貿易統計は市場予想に反し前月を上回りました。市場が輸出の鈍化を想定したのは、中国当局がデルタ変異株の感染抑制のため特定地域に厳格な活動制限を実施、そのため主要港湾施設の一部の活動が停止したと見られたからです。輸出が予想を上回ったのは一部港湾の抑制よりも、休暇を前にした需要の前倒しが上回った可能性が考えられます。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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中国貿易統計:8月の中国貿易統計は若干改善、景気減速懸念に一息

中国税関総署が2021年9月7日に発表した8月の輸出はドル建てで前年同月比25.6%増と、予想の17.3%増、7月の19.3%増を上回りました。また、輸入は同33.1%増と、市場予想の26.9%増、前月の28.1%増を上回りました(図表1参照)。このような結果、8月の貿易黒字は約583億ドル(約6兆4000億円)となりました。

 

月次、期間:2018年8月~2021年8月、貿易収支は金額、プラスは黒字 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]中国の輸出と輸入(前年比)、貿易収支の推移 月次、期間:2018年8月~2021年8月、貿易収支は金額、プラスは黒字
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

中国国家統計局が8月31日に発表した8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.1と、市場予想の50.2とほぼ同水準であった一方、建設業とサービス業を対象とする非製造業PMIは47.5と、市場予想の52.0、前月の53.3を大幅に下回りました(図表2参照)。

 

月次、期間:2018年9月~2021年8月、PMIは50が景気拡大、縮小の目安 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]中国の(政府系)PMIと財新製造業PMIの推移 月次、期間:2018年9月~2021年8月、PMIは50が景気拡大、縮小の目安
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:中国貿易統計、市場予想、寧波港、変異株

8月の中国の貿易統計は市場予想に反し前月を上回りました。市場が輸出の鈍化を想定したのは、中国当局がデルタ変異株の感染抑制のため特定地域に厳格な活動制限を実施、そのため主要港湾施設の一部の活動が停止したと見られたからです。輸出が予想を上回ったのは一部港湾の抑制よりも、休暇を前にした需要の前倒しが上回った可能性が考えられます。

 

まず、8月の中国貿易統計の内容を簡単に振り返ります。輸出を地域別に見ると対米国は前年同月比15.5%増で、対欧州連合(EU)は同29.4%増となっています。デルタ変異株の感染拡大で停滞が懸念された対東南アジア諸国連合(ASEAN)向け輸出は同16.6%増と、年初来の伸びとなる(約32%)は下回りますが、前月の数字よりは改善しており底堅さを見せています。

 

輸出品目を見ると、コロナ関連ではパソコンなどが引き続き堅調な一方で、マスクなどは軟調で明暗が分かれる結果となっています。

 

次に輸入を見ると、8月は前年同月比で33.1%増の2360億ドルと(輸出もだが)過去最高の金額となりました。ただ輸入品のうち多くを占める原材料価格の上昇が輸入金額を押し上げた面も考えられます。

 

8月の中国貿易統計は、新型コロナの影響などが懸念されながらも市場予想を上回るなど底堅さが見られました。また、8月に2週間程度閉鎖された中国有数の港湾である寧波港(梅山ターミナル)は先月末に再開されました。

 

ただ、8月単月のデータは改善したもの、中国の貿易が今後も継続して伸びるのかに疑問もあります。例えば、中国の製造業PMIの構成指標である新規輸出受注を見ると、4月をピークに5月から4ヵ月連続で低下しています。こうした中で輸出が改善したことから、市場では欧米などの休暇(クリスマスや感謝祭)の注文が前倒しされた可能性を指摘する声もあります。輸出品目の中にはマスクのように、以前の特需はすっかり影を潜めた品目もあり、今後の動向に注意が必要です。

 

輸入についても、旺盛なコロナからの回復需要を反映した伸びと言う面と、価格上昇による輸入金額の増加を見分ける必要がありそうです。なお、8月の非製造業PMIは47.5と急低下しました。これは主にデルタ変異株の感染拡大を抑制するための厳格な都市封鎖(ロックダウン)が背景で、急落は一時的となる可能性があると見ています。

 

しかし自立反発のみでの国内需要の急激な回復は見込みがたく、当局の経済支援が求められます。ただ、これまでのところ中国は規制強化や不動産投資の抑制など、抑える活動が多く見られます。預金準備率を引き下げる景気への配慮を示したのは7月になってからです。中国の経済動向からすると、今後はマクロ経済の安定性に配慮しつつ、的を絞った景気支援が想定されます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国、市場予想を上回った8月の貿易統計の今後』を参照)。

 

(2021年9月7日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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