空いている「試合前」でも「観客1万人のライブ会場」
そうした新たなチャレンジには、常に“批判”も付き物だ。
「勇気がいりましたね」と湊。特に野球界には、依然として「グラウンドに女性が入ってくるとは何事だ」という“旧態依然のコンセプト”が残っているのも事実だ。
明治時代から脈々と続く日本野球界の長き歴史。その伝統を築き上げてきた先人たちにとっては、少々理解しがたい部分があるのかもしれない。
しかし、プロ野球はスポーツ・エンターテインメントの一大コンテンツだ。
応援による華やかさをプラスすることは、決してマイナスではない。むしろ、それが求められている時代でもある。
「BsGirlsを作ったとき、湊さんも結構、すごい決断をしはったな、と思いましたね。絶対に賛否両論ありますし、たぶん、バッシングだって受けることもあるでしょう。でも、何に変えても、そういうのは出てくるもんですよね。だから最初、やるからには3年はやりましょうと。でも、次(2021年)で8年目になります」
そう振り返った東にとっても、野球界という“畑違いのフィールド”に、エンタメのプロとして乗り込んでいくことへの戸惑いが、当初はあったという。
「球団が、どういった客層を呼びたいのか。ファンの人たちが球場に足を運んでくれたところで、野球が好きで、BsGirlsのファンになる人もいるでしょうし、逆にライブとかでBsGirlsを見て好きになって、そこで野球も好きになって、球場に来ることもある。僕らには、後者の取り組みの方がそうなのかなと。でもどちらにしても、目的は集客増ですからね」
だから、野球界という枠の中から考える必要など、全くないのだ。
例えば、BsGirlsは、プレーボール前にグラウンドで曲を披露する。
試合前のドームには、1万人近いファンが入っているとはいえ、まだ空席が目立つ時間であるのも確かだ。これは、都市部を本拠地とする球団にありがちなことで「平日のナイターだと、午後7時を過ぎたくらいでないと、人が集まってこないんですよね」と湊。
試合開始前は、決して満員の状態ではないのだ。
ところが、エンターテインメントの世界に置き換えれば、その空席が目立つ中でも、1万人の観客だと「大阪城ホールでコンサートをしているような動員数」と東は表現する。
つまり、オリジナル曲とダンスを披露する“観客1万人のステージ”が、年間70試合近くある計算になる。
同じ“舞台”を見る視線も、立場が違えばこれだけ変わるのだ。
「1試合で、平均でも1万人、2万人の人たちがずっと見てくれる。だから、彼女たちの認知度はすごく高いんです。それにプラス、外のイベントとかに出ていけば、当然ながらプロ野球という有名なステージの中で、こういうことをやっているというだけでスポットは当たるんです。だから、もしかしたら、まだ自分たちはそういうところを生かし切れていないのかもしれません。爆発させたいな、というのはありますね」