「TPP」が海外進出の追い風になる
しかも、中小企業の海外進出を後押しする環境は10年前よりも、格段に整っています。つまり大きな流れとして、以前に比べて中小企業が海外マーケットを切り拓いていくことがはるかに容易になっているのです。
2018年に発行したTPP協定も、そうした流れの一つに位置づけることができます。TPP協定とは、環太平洋パートナーシップ(Trans-Pacific Partnership)協定の略称で、関税撤廃などアジア太平洋地域における人、物、金、情報、サービスの移動をほぼ完全に自由にすることを目指した国際的取り決めです。
2021年4月現在、日本のほかにオーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの合計11カ国が参加しています。
政府のTPP等総合対策本部によってまとめられた「総合的なTPP関連政策大綱」では、その効果に関して次のように述べられています。
「TPPを契機に国や地方公共団体、商工会、商工会議所等の各種支援機関等により創設した『新輸出大国コンソーシアム』について、農業協同組合・観光協会等との連携強化や地域の企業グループに対する支援等を通じ、地域資源の活用や訪日外国人への売り込み、世界市場(グローバル)に対し地方の中堅・中小企業等(ローカル)が直接製品等を提供するグローカルな取組等を更に促進する。
また、イノベーションや農商工連携も含めた他産業との連携を通じて、コンテンツや食文化などに代表されるクールジャパンやグリーン社会の実現に資する環境技術など、モノやサービス、コンテンツのグローバル市場開拓・事業拡大を目指す企業に対し、下記②、③(著者注釈:②=コンテンツ、サービス、技術等の輸出促進、③=農林水産物・食品輸出の戦略的推進)の施策等とも連携しつつ、製品開発、国際標準化、知的財産、人材、海外企業とのマッチングや展示会を含めた販路開拓支援等の総合的な支援を提供する。
コロナ禍でも中堅・中小企業が海外展開を進められるよう、中堅・中小企業へのEC向けの商品開発支援やEEC事業者との契約締結等の支援など、専門家による支援を拡充する。また、金融機関(政府系金融機関を含む。)による企業の海外展開支援を促進する」
このように、TPPは大企業のみならず、グローバル化に取り組む中堅・中小企業にとっても大きな恩恵があるものなのです。
そして、海外展開に関するTPPの具体的な効果やメリットとしては、一般に以下のような点が挙げられています(経済産業委員会調査室柿沼重志・東田慎平著「中小企業の海外展開の現状と今後の課題―TPPを通じた『新輸出大国』の実現に向けて―」をもとに作成)
①関税撤廃
自動車部品等のほか、繊維・陶磁器等の軽工業品についても関税撤廃を実現。
→中小企業自らの輸出拡大のみならず、大企業の輸出拡大を通じても中小企業の事業にメリットが期待できる。
②原産地規制の「完全累積制度」の導入
複数の締約国において付加価値の足し上げを行い、原産性を判断する完全累積制度を採用。
→部品等を輸出する中小企業にメリット。いわゆる「居ながらにしての海外展開」が可能になる。
③投資・サービスの自由化
コンビニエンス・ストアや金融業等に関する外資規制が緩和。
→食品や日本各地の特産品等を生産する中小企業がコンビニエンス・ストアと連携することで海外展開が容易になる。
④電子商取引に関する規定の導入
消費者が電子商取引を安心して利用できる環境の整備。
→ITを活用して、海外で商品を販売することができる。いわゆる「居ながらにしての海外展開」が可能になる。
⑤政府調達に関する規定の導入
調達の公平性や透明性に関する手続規則が規定される。
→インフラ市場や政府関係機関の調達市場へのアクセスが改善する。
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