「優秀な人間から辞めていく」早期退職を促す会社の恐しい末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

現在のような「非連続の時代」においては、やむを得ずリストラに踏み切る企業は今後も増えてくるでしょう。リストラは、社内の混乱や人材流出を引き起こします。もしあなたが中間管理職だったら、会社の危機的状況を乗り切るために何をしますか? ※本連載は、木村尚敬氏の著書『修羅場のケーススタディ』(PHP研究所)より一部を抜粋・再編集したものです。

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※※本記事の読み方※※

●まず「ケース」を読んでいただき、2~3分かけて「自分ならこうする」という自分なりの答えを導き出してください。

 

●その上で、「解説」を読み、自分の考えとどこが同じでどこが違っていたかを確認してください。

 

●著者の「解答」は解説の最後に挙げていますが、最初から見ないようにしてください。

リストラの結果、優秀な人間から辞めていく事態に発展

<Case:「早期退職」制度導入により大混乱の社内。優秀な人材も続々と流出!?>

元々業績が厳しかった我が社だが、コロナ禍による売上激減により、ついに「早期退職制度」導入が発表された。自分は幸い、「肩たたき組」には入っていないようだが、社内の動揺は極めて大きい。

 

早期退職制度に含まれない優秀な若手までが「この会社には未来はない」と、転職を考えているというウワサも流れている。正直、仕事にも手がつかない状況だ。

 

⇒Q. 中間管理職のあなたが今、社内の混乱を収めるためにできることは何か?

ホッとしている暇はない…「人材流出の阻止」が急務

「自分が肩たたき組に入らずにほっとひと安心」…それが偽らざる思いかもしれません。しかし、そうした考えは頭から払拭(ふっしょく)しましょう。肩たたきにあわなかったということは、「今後の会社を牽引していくべき人材」と会社があなたを評価したということでもあります。使命感を持って、会社の危機を乗り切ってもらいたいと思います。

 

このケースにもあるように、早期退職制度の導入に踏み切った企業は大混乱に陥ります。社内は疑心暗鬼に包まれ、通常業務すらまともに進まなくなることもあるでしょう。

 

そして、どんな会社でも最初に起こるのが「優秀な人間から辞めていく」ことです。それを放置すると、ますます会社は危機的状況に陥ります。中間管理職であるあなたが真っ先にすべきは、こうした「優秀な人材の流出」を何としてでも阻止することです。

 

そのためには、少々青臭く感じるかもしれませんが、「夢」を語るのが効果的です。

 

経営状況が厳しい以上、金銭面での引き留めは難しいでしょうし、こうした優秀な人材にはそもそも、好条件のオファーがいくつも舞い込んでいるものです。だからこそ、「今は確かに厳しいけれど、3年後、会社はこう変わるんだ。ぜひ、ついてきてほしい」と夢を語り、その夢を一緒に実現しようと説得するのです。

 

夢といっても、単なる妄想・願望ではいけません。あくまでリアリティある将来の成長の絵姿を伝えることです。

「納得できないリストラ」なら自主的な早期退職もアリ

また、社内にはおそらく、リストラに踏み切った会社や経営陣に対する批判や怨嗟(えんさ)の声が渦巻いていることでしょう。

 

最近は業績が好調なうちに、より筋肉質な組織を作るための「攻めのリストラ」も増えていますが、このケースのように元々業績が悪化していたのなら、後手に回っていたであろう経営陣に責任の一端があることは紛れもない事実です。あなたも声高に、「会社の責任」を追及したくなることでしょう。

 

ただ、その前にぜひ考えてみてもらいたいことがあります。それは、「この状況において、自分が社長でもリストラを決断しただろうか?」ということです。

 

もし、自分でもそうしたと考えるのなら、あなたはあくまで「与党」として、経営陣のサポートに徹するべきです。

 

では、もしリストラという経営陣の判断に納得がいかなかったら? その時は覚悟を決め、自分もまた早期退職に手を挙げるという選択肢も見えてきます。つまり、自分の信念を貫く生き方のためには、会社に依存しないキャリア構築を普段から心がけておくことが重要なのです。

中間管理職が問われる「覚悟」

リストラ局面といった会社の一大事においても、事業は継続しているわけで、長期的な事業の成長に鑑(かんが)みれば、リストラをしつつも新規事業への投資に踏み切ったり、場合によっては中途採用を行うようなケースも求められるでしょう。

 

一見、矛盾しているように思うかもしれませんが、リストラを「その場しのぎの固定費削減」ではなく、将来の成長へ向けた端緒という位置づけとして捉えるのであれば、成長へ向けた施策も同時に実行していかねばなりません。

 

むしろ、社内の批判を恐れてとりあえず現況をしのげる最低限の固定費削減だけに留めようとする会社ほど、その後、何度もリストラを繰り返すことになりがちです。「一度限りの大手術」と決めて徹底的なリストラを行い、コマツをV字回復させた坂根正弘氏のような覚悟が求められるのです。

 

現在のような「非連続の時代」においては、やむを得ずリストラに踏み切る企業は今後も増えてくるでしょう。しかし、それをその場しのぎに終わらせるのか、むしろ長期的・持続的に会社を発展させるための体質改善の機会にするのか。

 

経営者の覚悟とともに、中間層であるあなたがそれをどうサポートするかが問われるのです。

 

【A. 「危機を乗り越えた先の夢」を語り、人材の流出をなんとしてでも阻止せよ。】

 

 

木村 尚敬

株式会社 経営共創基盤(IGPI)

共同経営者(パートナー) マネージングディレクター 

 

株式会社 経営共創基盤(IGPI) 共同経営者(パートナー)
マネージングディレクター 

ベンチャー企業経営の後、日本NCR、タワーズペリン、ADLにおいて事業戦略策定や経営管理体制の構築等の案件に従事。IGPI参画後は、製造業を中心に全社経営改革(事業再編・中長期戦略・管理体制整備・財務戦略等)や事業強化(成長戦略・新規事業開発・M&A等)など、様々なステージにおける戦略策定と実行支援を推進。

慶應義塾大学経済学部卒、レスター大学修士(MBA)、ランカスター大学修士(MS in Finance)、ハーバードビジネススクール(AMP)

IGPI上海董事長兼総経理、モルテン社外取締役

Japan Times ESG推進コンソーシアム アドバイザリーボード

主な著書に『ダークサイド・スキル』(日本経済新聞出版)、近著に『管理職失格』(柳川範之氏との共著、日本経済新聞出版)などがある。

著者紹介

連載修羅場のケーススタディ

修羅場のケーススタディ 令和を生き抜く中間管理職のための30問

修羅場のケーススタディ 令和を生き抜く中間管理職のための30問

木村 尚敬

PHP研究所

本当にヤバい時、あなたならどうする? ベストセラー『ダークサイド・スキル』(日本経済新聞出版)の著者が送る、ユニークな「紙上ケーススタディ」が誕生。 「上司から、とうてい達成できないような目標を強要された」…

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