「売上目標」は邪魔…数値目標をなくして起こったこと
従業員が売上から解き放たれたことで、佰食屋には、従業員発信のさまざまな改善が生まれました。そして、そのアイデアは、「売上を上げること」よりはるかに高次元の「お客様の満足度」を引き上げるアイデアでした。
たとえば、整理券配布制度。
最初にわたしがはじめたときは、「30分ごとに15名ずつご案内する」と決めていました。けれども2店目のすき焼き専科がオープンしてオペレーションをはじめたところ、「30分ごとに20名、10名と、交互にご案内したほうがいいのではないか」という意見が出たのです。
たしかに、食事のスピードは人それぞれ。食べるのが特に遅い方がいらっしゃると、次のお客様を少しお待たせてしまうか、食事されている方を急かすことになってしまいます。また、厨房の業務スピードやごはんを炊く時間のことを考えると、たしかに理に適っていました。
実際にその方法を取り入れたことで、お客様をお待たせしたり、急かしてしまうことが減り、ゆとりを持ってご案内できるようになりました。
これが「売上を伸ばす」アイデアという視点だと、どうだったでしょうか。
もしかすると、お客様の食事のスピードに関係なく、「とにかく数を」といった施策が生まれてしまっていたかもしれません。
働くなかで、「本当はこうしたほうが効率がいいのに」「この工程は無意味なのでは?」と違和感を持つことはたくさんあると思います。でも、心に余裕がなければ、多くの人は与えられた業務をこなし、ギリギリに設定された目標値をクリアすることに精一杯です。「そう決まっているからしかたない」と受け流してしまうでしょう。
その小さなモヤモヤが、長い目で見たとき、仕事の効率を下げ、作業の妨げとなってきます。できるだけみんなが楽しく、ストレスなく働くために、目の前のお客様に喜んでもらうために、「売上目標」はじゃまなのです。
佰食屋では、従業員が「お客さんが来ない。どうしよう」と不安になることはありませんし、「メルマガでなにかお得なお知らせを書かなきゃ」「映える写真をアップしなきゃ」と悩むこともありません。「どうしたら、もっといいお店になるだろう?」「どうしたら、お客様に喜んでもらえるだろう?」と考えるところからスタートできるのです。
佰食屋のメニューがいまのように4ヵ国語対応になったのも、そこが始まりでした。
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