「お客様は神様じゃない」と言い切る京都のステーキ丼専門店に行列が絶えないワケ

中村 朱美
「お客様は神様じゃない」と言い切る京都のステーキ丼専門店に行列が絶えないワケ
(※写真はイメージです/PIXTA)

営業はランチのみ、どんなに売れても1日100食限定と、従来の業績至上主義とは真逆のビジネスモデルを実現する京都の国産牛ステーキ丼専門店『佰食屋』。「お客さまは神様ではない」という信念を貫きながらも、当店が人気店であり続けるワケを見ていきます。※本記事は『売上を、減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放』(株式会社ライツ社)から一部を抜粋・再編集したものであり、本文中の店舗情報は現在と異なる場合があります。

大人気ステーキ丼専門店の行動指針、きっかけは?

佰食屋には、クレド(行動規範・信条)があります。

 

「会社は明日の責任を。みんなは今日の責任を。」

 

「会社は明日の責任を。」そのつづきには、こう記しています。

 

「会社はこれからの集客や広報に責任を持ち、お客様にたくさん来ていただく努力をし、みんなを大切にします」。

 

次に「みんなは今日の責任を。」その下にはこうあります。

 

「みんなはお客様が限られた時間の中で最大限満足していただけるよう、接客・調理・おもてなしの努力をし、お客様を大切にします」。

 

つまり、佰食屋が従業員に求めるのは「現場」です。逆に言うと、それ以外のことは一切業務として課すことはありません。

 

佰食屋は採用面接のときにも、このクレドに立ち返り、その人の仕事に取り組む姿勢を探ります。そして、佰食屋の働き方を理解してもらいます。

 

いまとなっては佰食屋の指針となっているクレドですが、はじめから、従業員みんなが携帯できるようなものとしてつくろう、と思っていたわけではありませんでした。

 

そもそものきっかけは、社員証だったのです。社員証には、とっておきの「従業員特典」と「緊急連絡先」が記載されています。緊急連絡先はもちろん、代表電話番号と最寄りの交番の電話番号です。

 

そして、従業員特典。

 

佰食屋の従業員には、メニューのテイクアウトが半額で買えるのと、生肉と卵を原価で買える! というお得な特典があります。佰食屋ではお客様に生肉の販売はしていませんが、この特典のためだけに「食肉販売営業許可」をとりました。

 

従業員には主婦も多いので、本当に喜んでくださいます。「もうスーパーで肉を買おうとは思わない」「これがあるから佰食屋は辞められない」といった調子です。

 

これを打ち明けると、みなさん「うらやましい!」「そのためだけに佰食屋で働きたい!」と仰ってくださいますが、そうはいきません。あくまで、佰食屋から従業員のみんなへの感謝、ありがとうの気持ちです。

 

この社員証をつくっていて、なんか裏が真っ白なのももったいないなぁ、と思い、とっさに出てきた言葉を連ねたのがこのクレドだったわけです。

佰食屋では、「お客様は神様」じゃない

2015年にこのクレドができるまで、佰食屋には特になにも決まりごとがありませんでした。オープンしてから、日々、お客様とどう接していくか、お店にどんな雰囲気を醸成していけばいいのか。みんなと一緒に働きながら、背中を見て覚えてもらうようにしていました。

 

特に意識したのは、お客様との距離の取り方でした。

 

佰食屋には「1日100食限定」「整理券制度」「時間交代制」「予約不可」と、ほかの飲食店にはない特長的な仕組みがあるため、お客様の理解と協力が欠かせません。

 

この特長は、時にクレームにつながってしまうこともあります。「わざわざここまでやってきたのに売り切れなの?」「予約ができないって、どういうこと?」。

 

「お客様は神様です」。そういったスタンスであれば、お客様の仰ることがすべてです。ご要望通りに叶えることが従業員に求められるでしょう。

 

けれども佰食屋では、お客様も従業員も対等、どちらも大切な存在です。

 

あらかじめ決められたルールをお客様に守っていただけない場合、毅然とお断りしなければならないこともあります。その際、クレームにつながらないよう、いかに適切に対応するか。

 

真摯な態度で接し、どういった言葉を選べばいいのか。これを「佰食屋イズム」として伝えることが重要だったのです。

 

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売上を、減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放

売上を、減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放

中村 朱美

ライツ社

各メディアで話題沸騰中の「佰食屋」店主、初の書き下ろし著書。 ・ランチのみ、の国産牛ステーキ丼専門店 ・どんなに売れても、1日100食限定 ・営業、わずか3時間半 ・インセンティブは、早く売り切れば早く帰れる ・飲…

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