(※画像はイメージです/PIXTA)

「相続」はトラブルに発展しやすいもの。知識を身につけ、もしものときに備えておく必要があります。今回は、こすぎ法律事務所弁護士の北村亮典氏が、「相続分の譲渡」について解説していきます。

相続分を譲渡した者は遺産分割協議に参加する必要なし

相続分を譲渡した後は、相続人としての地位は無くなり、相続財産に関する権利を一切失うことになります。

 

そのため、その後に、譲受人その他の相続人間で遺産分割協議や調停を行うこととなった場合も、相続分を譲渡した者はその協議・調停に加わる必要はない、ということになります。

 

実務上は、相続分譲渡後に遺産分割調停が行われるような場合、家庭裁判所は、譲渡の事実を明らかにするため、譲渡人からの相続分譲渡届出書及び印鑑登録証明書の提出を促すとの運用がされています。譲渡届出書が提出されると、裁判所が排除決定を行い、相続分の譲渡をした共同相続人は遺産分割手続の当事者ではなくなります。

 

また、相続分の譲受人は、譲受人が第三者の場合(相続人ではなかった場合)であっても、その後の遺産分割協議に参加すべきこととなります。

 

したがって、譲受人が第三者であった場合、この者を参加させずになされた遺産分割協議の効力は無効となります。

相続分の譲渡を後から取り消すことはできるのか

相続分の譲渡は、法律的には、譲渡人と譲受人との間の「契約」ということができます。したがって、一旦し譲渡が成立た後でも、譲渡人と譲受人の合意があれば解除することができます。

 

また、仮に、相続分の譲渡をした後に、譲渡人が預かり知らない事情により高額の遺産が発見されたなどの事情が生じた場合、そのような高額な遺産があることを知っていれば相続分の譲渡をしなかったであろう、ということであれば、錯誤により無効になる可能性もあります。

相続分の譲渡は、「第三者」に対しても可能だが…

相続分の譲渡は、相続人以外の第三者に対しても行うことが可能です。

 

しかし、この場合、残された相続人は、この第三者である譲受人を加えて遺産分割協議をしなければならないということとなり、これはケースによっては遺産分割協議が円滑に進行しないおそれがあります。

 

そこで、民法は相続人の取戻権(民法905条)というものを認めています。

 

【民法905条】

1.共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。

2.前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。

 

この取戻権を行使した場合には、償還のための価額・費用を負担した相続人に、その相続分が移転します。

 

 

※本記事は、北村亮典氏監修のHP「相続・離婚法律相談」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

 

 

北村 亮典

こすぎ法律事務所弁護士

 

 

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